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【勝負師たちの系譜】藤井七段との対戦記 羽生竜王のような指し回しに驚嘆 (2/2ページ)

 しかしこのところ自身で感じていたのは、危機を感じる能力が落ちてきたのではないかということだ。将棋はこれが落ちると致命傷になる。

 今回はまず、対局に遅れる失態を犯した。最近引っ越して前と違って時間がかかるのだが、十分間に合うと油断したのが、第1の失敗。見事間に合わず、6分の遅刻で3倍の18分が加算された。遅刻はここ10年くらいなかったので、気持ちがやや落ち込んだ。

 対局は、私が序盤早々から無理して動き、作戦勝ちを目指したのが、盤上の失敗。逆に作戦負けとなった。

 その後、藤井のとても16歳とは思えない落ち着いた指し回しが続く。無理に勝とうとするのでなく、相手に手を渡す、いわゆる大人の指し方に驚いた。羽生善治竜王は昔から、手渡しがうまいといわれているが、その羽生さんと指しているような気がしていた。単に若さで押し切るのでなく、緩急自在の指し回しができる、才能を感じたことは確かである。

 残念ながら、藤井が今年度中にタイトルを取る道は途絶えたが、どこで挑戦者として名乗りを上げるかは、今後の大きな注目点となるだろう。

 ■青野照市(あおの・てるいち) 1953年1月31日、静岡県焼津市生まれ。68年に4級で故廣津久雄九段門下に入る。74年に四段に昇段し、プロ棋士となる。94年に九段。A級通算11期。これまでに勝率第一位賞や連勝賞、升田幸三賞を獲得。将棋の国際普及にも努め、2011年に外務大臣表彰を受けた。13年から17年2月まで、日本将棋連盟専務理事を務めた。

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