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【勝負師たちの系譜】一人のタイトル獲得が… 83年、高橋道雄棋士の戴冠で「55年組」躍進 (2/2ページ)

 その帰り際、求められた色紙に「涙」の一文字を書いて帰ったのは彼らしいエピソードかと思う。高橋は翌年、挑戦者となり、4-0で王位を奪い返した。その後はタイトル5期獲得の、トップ棋士となったのである。

 タイトル戦は当然、主催者にお世話になるからたとえ敗れても、通常は打ち上げを断ることはない。

 打ち上げを断ったのはもう一つ、2009年の王位戦で、挑戦者の木村一基八段(当時)にいきなり3連敗と追い込まれた、その第3局の深浦康市王位の例がある。深浦は責任感が強く、保持者が4連敗で敗れては申し訳ないという気持ちで、大きなプレッシャーがかかっていたのだと思う。

 次局の地元佐世保でのカド番をしのぐと、その勢いのまま後を全部勝ち、将棋界2度目の3連敗4連勝で、王位を防衛したのだった。

 ■青野照市(あおの・てるいち) 1953年1月31日、静岡県焼津市生まれ。68年に4級で故廣津久雄九段門下に入る。74年に四段に昇段し、プロ棋士となる。94年に九段。A級通算11期。これまでに勝率第一位賞や連勝賞、升田幸三賞を獲得。将棋の国際普及にも努め、2011年に外務大臣表彰を受けた。13年から17年2月まで、日本将棋連盟専務理事を務めた。

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