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【警戒せよ!生死を分ける地震の基礎知識】地震で露呈するアスベスト問題 (2/2ページ)

 アスベストの歴史は古い。『竹取物語』に出てくる火にくべても燃えない「火鼠の皮衣」も石綿だったといわれている。平賀源内が秩父山中で石綿を発見し、18世紀に布にしたものを中国にならって「火浣布(かかんぷ)」と名付けて幕府に献上した。

 人類が便利だと思って導入したものの、あとで困る例はアスベストだけではない。

 フロンがそうだ。エアコンや冷蔵庫の冷媒として安くて高性能で便利に使われていた。だが、廃棄されたあとで大気中を上がっていってオゾン層を破壊することがわかったのは後年だった。オゾン層が破壊されることで有害な紫外線が地球に降り注ぎ、人類をはじめ地球上の生物に害を及ぼすことが心配されている。

 またPCB(ポリ塩化ビフェニール)もそうだ。

 無色透明で化学的に安定で、耐熱性、絶縁性や非水溶性などに優れていた。このため変圧器やコンデンサーなどの電気絶縁油、ノンカーボン感圧紙、塗料、印刷インキの溶剤などに幅広く使われた。

 だが、PCBには発がん性があり、皮膚障害、内臓障害、ホルモン異常を引き起こすなど強い毒性が発見された。68年にPCBで汚染された食用米ぬか油で起きた「カネミ油症事件」をきっかけに、75年に製造が禁止された。この事件は、いまだに後遺症が残り、政府や会社が及び腰なこともあって最終的には解決されていない。

 アスベストは地球にあった鉱物だが、フロンもPCBも、もともと地球にはなかったが人類が発明したものだ。「便利な生活」は意外なところでツケをまわされるものなのである。

 ■島村英紀(しまむら・ひでき) 武蔵野学院大学特任教授。1941年、東京都出身。東大理学部卒、東大大学院修了。北海道大教授、北大地震火山研究観測センター長、国立極地研究所所長などを歴任。著書多数。最新刊に『完全解説 日本の火山噴火』(秀和システム)。

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