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【桂春蝶の蝶々発止。】似ている2人の考え方…元貴乃花親方は現代の世阿弥!? (1/2ページ)

 今回は、大相撲・元貴乃花親方(元横綱)について語りましょう。もはや「元貴乃花親方」としか呼び方がないのもカオスですが…。私は「華のある人」とは、こういう人を指すのだと思います。「元貴乃花親方」では長いので「貴様(たかさま)」と呼びます。「きさま」ではありません(笑)。

 「貴様」のように、人々の心を離さない「人間の華」、その華とは何ぞやを説いたのは、能の創設者「世阿弥」です。私は「『貴様』って、世阿弥の生まれ変わりとちゃうか?」と思うほど、2人の考え方が似ていることに気付きました。

 世阿弥が、能楽の心得や美学を書きつづった『風姿花伝(ふうしかでん)』という書物があります。有名なフレーズが「秘すれば花」です。考えてみてください。明暗双々…「貴様」ほど、人生で光と影の彩りを感じられる人はいません。

 私が初めて意識したのは、平成13(2001)年の「五月場所」千秋楽。「貴様」はひざに大けがを負いながら、横綱・武蔵丸を豪快な上手投げで破り、14場所ぶりの復活優勝を遂げたのです。

 「貴様」を能のシテ方(=主役)と例えるなら、あれは最高の舞台でした。素晴らしいシテ方には最高のワキ方(=脇役)がつきます。そう、当時の小泉純一郎首相です。あの名ゼリフ、「痛みに耐えてよく頑張った! 感動した! おめでとう!」。あれを言わせてしまうのも、「貴様」のすごさなのですよ。

 そして、ここからが大切です。「貴様」はこんな時でも、決して多くを語らない。インタビューで痛みを聞かれても、「特にないですよ」と言うだけでした。大変なけがだと、みんなが分かっている。観客は涙で大歓声を送りました。

 すべてを見せないからこそ、観客は演者に花を感じ、それを愛でる。世阿弥が求めた「秘すれば花」を地でいくのが「貴様」なのです。

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