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【昭和のことば】今でも飛行機に乗る度にかみしめる… 逆噴射(昭和57年)

 もはや若い人にはピンとこない話かもしれない。昭和を知る世代は、今でも飛行機に乗る度にこのことばの意味をかみしめる。逆噴射である。

 猛スピードのまま着陸した機体の速度を「急激に」落とすため、エンジンの噴射方向を逆にする。今では周知の手順であるが、飛行機に乗る機会の少ない当時の子供たちにはなじみのないことばであった。この年起きた日航機羽田沖墜落事故で、機長が「逆噴射」を着陸寸前にぶちかまし、このことによって世間に広まった、いわくつきのことばである。

 この年の主な事件は、「東京・赤坂の『ホテル・ニュージャパン』で火災発生、死亡者33人」「500円硬貨発行」「IBM産業スパイ事件」「東北新幹線、大宮-盛岡間開業。上越新幹線、大宮-新潟間開業」「九州北西部に集中豪雨で、長崎『眼鏡橋』が崩壊」「国鉄リニアモーターカー、世界初の有人浮上走行に成功」「三越取締役会で岡田茂社長を解任。愛人も脱税容疑で逮捕」「パンダのフェイフェイ、上野動物園に到着」「第1次中曽根康弘内閣成立」など。

 この年の映画は、『蒲田行進曲』『E.T.』。本は、穂積隆信『積木くずし』、鈴木健二『気くばりのすすめ』など。横綱北の湖が史上初通算873勝達成。中・高校の卒業式への警官関与が1528校、校内暴力の嵐が吹き荒れた。

 2年後、この流行語を使った映画『逆噴射家族』(小林よしのり原案、石井聰亙監督)が公開された。死者が出ている事故から生まれたことばなので、いまでは不謹慎のそしりを免れないのかもしれないが、「たまった鬱憤があらぬ方向へ噴射される」気分が、高度経済成長後、昭和後期の「元祖まったり」な時代をよく表していたと、改めて気付かされる。(中丸謙一朗)

 〈昭和57(1982)年の流行歌〉 「北酒場」(細川たかし)「聖母たちのララバイ」(岩崎宏美)「待つわ」(あみん)

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