【東アジアの動乱と日本の針路】中国は国防、経済面でも“最大の敵” (1/3ページ)
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ドナルド・トランプ米政権の大戦略とは何か。
トランプ大統領には非常に明確な目標がある。「米国経済の復活」であり、「世界の覇権国家、米国の地位を維持する」ということでもある。
米国経済の復活とは、「国境ある経済の復活」であり、「国民経済の繁栄」を意味している。そして、国民経済の主力は米国の中産階級・勤労者層であるから、トランプ政権の目指すのは「経済ナショナリズムの復興」であると断言してよい。
注意深く見なければならないのは、トランプ氏の多国籍企業や無国籍企業への態度である。
トランプ氏は、米国発祥であっても、無国籍化した企業には厳しい姿勢で臨んでいる。トランプ氏の経済ナショナリズムを支えるのは、米国の勤労大衆であり、言い換えれば「草の根保守層」である。多国籍に展開し、海外に雇用をつくり、米国で失業者を生み、納税しないような無国籍企業を、トランプ政権は厳しく叱責する立場にある。
例えば、アップルという企業を考えてみよう。
アップルは、スマートフォン組み立ての多くをチャイナ(中国)で行っている。タックスヘイブンを利用し、米国での納税は最小限に抑えている。株主資本主義による経営では合理的だが、米中経済戦争の中では、米国という国家、米国の中産階級への裏切り以外の何ものでもない。