記事詳細

【zak女の雄叫び】《zak女の雄叫び お題は「贈る言葉」》新しい風が吹き抜ける (1/2ページ)

 青嵐過ぎたり誰も知るなけむひとりの維新といふもあるべく 春日井建

 二十数年前の初夏、同僚の女性が贈ってくれた歌だ。白い一筆箋にさらさら書いて、餞別の本の間にはさんであった。

 私はもともと内勤の職種で新聞社に入り、数年後に記者になった。同じ会社の中でも、ほぼ転職のようなものだ。右往左往しながら文化部、社会部で過ごした後、初めて東京近郊の総局に異動することになった。

 遅まきながら記者の基本を経験して一人前になりたい、という前向きな気持ちもあったが、不安を隠しきれない顔付きをしていたに違いない。一回り以上年上の彼女は、「人には見えなくても、新しい決意で踏み出すこともある。それって素敵じゃない」と背中を押してくれた。

 社会部から同時に異動になったのは事件屋の先輩で、コワモテを装っていたがやさしい人だった。一緒に総局へ挨拶に行って、駅に降り立ったとき、東京よりも「空が大きいな」と思ったのを覚えている。

 それから幾星霜、年齢だけは十分ベテランになった。仕事の中身が伴わず、求められるスピードに付いていける気がしない。会社が早期退職者を募集した際、ずいぶん迷った。