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【zak女の雄叫び】《zak女の雄叫び お題は「贈る言葉」》背中を押してくれた言葉 (1/2ページ)

 春になり、リクルートスーツ姿の若者を見かけると、自身の就職活動を思い出す。

 新聞記者志望で複数の新聞社を受けていたが、口べたが災いし、面接でことごとく失敗した。なぜ、自分はこんなにだめなんだろう。周囲の友達が次々と内定を決める中、春採用も秋採用もすべて落ち、すっかり自信をなくしていた。

 そのさなか、アルバイト先のうどん屋の大将ががんで入院した。お見舞いに行くと、大将が笑顔で迎えてくれた。ベッドの上の大将はやせこけ、トレードマークだった丸顔は変わり果てていた。

 「よく来たね、最近どう?」。大将に水を向けられるがままに、自分の近況を話した。志望していた新聞社が全滅だったこと。このまま新聞記者をあきらめるか悩んでいること。大将はじっと耳を傾けた後、私の目をまっすぐ見てこう言った。

 「前へ進みなさい、そうすれば道は開けます」

 大将はどんな気持ちでこの言葉を言ってくれたのだろうか。私よりよっぽどつらい立場にいるだろうに、どうして他人の背中を押すことができるのだろう。大将の強さや優しさを思うと涙をこらえきれなくなり、病室を後にした。そして、就職浪人してもう一度新聞社を受けようと決めた。

 翌春、産経新聞社の内定をもらったが、その報告ができないうちに大将は亡くなった。