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「やり手の女性社長」を裸同然で放り出した金正恩政権の謎の動き (1/3ページ)

 北朝鮮を1990年代後半に見舞った大飢饉「苦難の行軍」では、十万人単位の餓死者が出たと言われる。その一方、少なくない人々が、当時は違法だった市場で商売を始めた。それしか餓死を免れる方法がなく、生存本能からとった行動だった。そんなささやかな商売が、いつしか大きくなっていた。

 蓄積した富を金融業、輸送業などに投資し、豊かになっていった新興富裕層を、北朝鮮では「トンジュ(金主)」と呼ぶ。そんな彼らの間に衝撃が走った。ビールの卸売で財を成したトンジュ女性が逮捕され、平壌から追放されたというのだ。

 (参考記事:北朝鮮「金持ち女性」たちの密かな楽しみ…お国の指示もそっちのけ

 平壌のデイリーNK内部情報筋が、事の一部始終を語った。

 50代女性のキムさんは、2000年代後半から平壌市内の大同江ビール工場からビールを仕入れ、郊外にある平城(ピョンソン)や順川(スンチョン)の市場やレストランに配送するビジネスをしてきた。

 金正日総書記の指示に基づき、廃業した英国のビール工場から設備を買い入れ、立ち上げられたのが大同江ビール工場だ。2002年4月から生産を開始、主に平壌市内で販売し、味の良さで非常に高い評価を得てきた。

 工場は、運営予算と従業員への給料、配給を確保するために販路拡大を迫られた。キムさんは権力機関とのコネを利用して、工場に保証金を預けた上でビールを仕入れる権利を得た。

 キムさんは、人民委員会(市役所)から出張証明書を得て、全国有数の卸売市場のある平城や順川を行き来し、証明書がない場合には検問所でワイロを掴ませ通過していた。手腕を発揮して販路をどんどん広げ、平壌や周辺地域では名の知れた商売人となっていた。

デイリーNKジャパン

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