記事詳細

村上春樹さん、初めて「家族」を詳述 父の戦時体験など雑誌に

 世界的人気作家の村上春樹さん(70)が10日発売の月刊誌「文芸春秋」に、長年不仲だった父の生涯をたどる手記を寄せた。戦時中、出征先の中国で捕虜殺害に関わった可能性に言及し、自身のルーツに絡む負の歴史を直視、継承する覚悟をにじませた。村上さんが家族について詳述する文章を公表するのは初めて。

 「猫を棄てる-父親について語るときに僕の語ること」と題し、上下2段組みで計28ページ。父と野球をする幼少期の村上さんの写真も掲載した。

 手記によると、村上さんの父は2008年に90歳で死去。京都の古刹の住職の次男で、1938年以降に3度応召し、軍馬を世話する「輜重(しちょう)兵」などとして日中戦争の激戦地を転戦した。

 生前はほとんど戦争を語らなかったが、村上さんが小学生の頃、所属部隊で捕虜の中国兵を斬首した際の様子を不意に告白した。父自身が関与していたとしても不思議ではないとした上で村上さんは、「このことだけは、たとえ双方の心に傷となって残ったとしても(中略)言い残し、伝えておかなくてはならないと感じていたのでは」と推察。父の「トラウマ」を「息子である僕が部分的に継承した」とした。

 村上さんは父子間の確執にも言及。成績優秀ながら戦争で学問を断念した父の期待に沿えず「落胆させてきた」との後ろめたさがあると吐露。20年以上対面のない絶縁状態を経て、父の死の直前に「和解のようなこと」をしたと振り返った。