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【昭和のことば】「捨てるに捨てられない」愛着も? 『粗大ごみ』(昭和44年)

 高度経済成長期、市民や自治体は、生活の便利さと引き換えに、大量消費するようになった生活ゴミに悩まされるようになった。なかでも大型化してきた家電製品などのゴミの処理は、不法投棄を防ぐべく喫緊の課題だった。この年の8月、東京都が大型ゴミのトラックでの収集を開始した。このことにより、「粗大ごみ」の名称が広まり、やがてそれが、休日にテレビの前でごろ寝ばかりしているお父さんの「わが家の粗大ごみ」というありがたくない名称につながっていった。

 この年の主な事件は、「安田講堂事件」「東京駅八重洲地下街オープン」「連続ピストル射殺魔・永山則夫逮捕」「国鉄にグリーン車が設置」「東名高速道路全線開通」「原子力船むつ、東京で進水式」「米宇宙船アポロ11号人類初の月面着陸」「厚生省、発がん性が問題化した人工甘味料チクロの使用禁止を決定」「ベ平連など新左翼系団体、安保粉砕・首相訪米阻止で全国各地で初の統一行動」「佐藤・ニクソン会談終了。沖縄返還、安保堅持の共同声明発表」など。

 この年の映画は『男はつらいよ』。本は、庄司薫『赤頭巾ちゃん気をつけて』、海音寺潮五郎『天と地と』。金田正一投手、400勝達成。巷では、全共闘運動が収束、「シラケ」ムードが広がっていた。

 お父さんだけが一方的に揶揄(やゆ)される時代が、何だか懐かしい。この揶揄は男社会ゆえの権威と裏腹だ。そもそも何でもかんでもパッと捨てるのではなく、まだまだ物の少ない時代、捨てるに捨てられない、何となくうしろ髪を引かれる思いで捨てようとする、そんな「ごみへの愛着」さえ感じられる、はやりことばだったのかもしれない。=敬称略 (中丸謙一朗)

 〈昭和44(1969)年の流行歌〉「フランシーヌの場合」(新谷のり子)、「黒ネコのタンゴ」(皆川おさむ)、「いいじゃないの幸せならば」(佐良直美)

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