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イラン ホルムズ海峡封鎖で「令和のオイルショック」到来か (3/3ページ)

 封鎖が長引いて、発電の半分以上を占めるLNGの約3割が欠落したら、東電管内や中部電管内で大停電が起きたりしないのか。

 この問いに前出の石井彰氏はこう答える。

 「その心配には及ばない。日本のLNG輸入は長期の固定契約が多いから、それしか方法がないと誤解している人が多いが、LNGもスポットで買えるのです。欧州や中国では、パイプラインで天然ガスを輸入し、夏の間に地下に貯蔵して冬の暖房需要に備えているが、LNGの価格が上がると貯蔵分をスポットで売りに出してくる。だから、LNGが足りなくなったら買えばすむこと。福島の原発事故の直後、原発が止まったため計画停電が実施されたが、そのあと停電が起きなかったのはスポットで買いまくったからです。万が一、足りないという事態になったとしても、地元の了解は必要ですが、政治が決断して原発を再稼働させれば真夏のピーク時でも耐えられます」

 ホルムズ海峡が封鎖されても、大停電が起きるような事態は避けられるという。

 ただし、別の面での影響はある。

 「スポットで買うとなれば、他の国より高い値段を提示しなければならないので、天然ガスも原油も当然、価格が上がる。ホルムズ海峡の封鎖という事態になれば、投機マネーが集まってきて、おそらく現在の2倍以上の価格になる。1970年代の第一次、第二次オイルショックのような事態になるでしょう」(石井氏)

 原油や天然ガスが暴騰すれば何が起きるのか。1970年代まで遡らなくても、つい最近、日本人はそれを体験している。

 2008年9月のリーマンショックの直前、投機マネーが商品先物市場で暴れ回り、原油価格(WTI)は史上最高の1バレル147ドルをつけた(現在は50ドル前後)。

 ガソリン価格は1リットル200円を突破し、電気代も大幅に上昇。燃料費の高騰でトラック業者の倒産が例年より3割増加した。漁業も経費のなかで燃料の占める割合が高く、燃料費が5年前に比べて2.5倍になったのに価格はセリで決められるため、価格転嫁が難しく、2008年6月にはイカ釣り漁船の全国ストライキが決行された。

 航空業界では燃油サーチャージが導入され、航空運賃も高騰。日本からハワイの往復で1人あたり4万円もの燃油サーチャージが追加されることもあった。

 現代の農業は、天然ガスから肥料を製造し、石油で農業機器を動かして行なうしくみで、原油・天然ガスが高騰すると穀物価格も連動して高騰する。穀物飼料の価格が高騰して畜産農家も打撃を被ったし、食品価格も値上げが相次いだ。

 のど元過ぎれば……で忘れてしまった人が多いかもしれないが、ほんの10年ほど前に日本で起きたことである。ホルムズ海峡が封鎖されると、安倍首相と日銀が待ち望んだ“インフレ”が実現するが、エネルギー資源の高騰によるインフレはコストインフレであって、経済には悪影響しか及ばさず、日本経済は不況に突入しかねない。そうなれば、まさに「令和のオイルショック」到来である。

 ●取材・文/清水典之(フリーライター)

NEWSポストセブン

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