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【富坂聰 真・人民日報】「香港で騒いでいることでデモするなら、オレたちは365日ずっとデモ」 北京で感じた香港の「遠さ」 (1/2ページ)

 「怒っても無駄だ。システムがいかれてしまったみたいだからな」

 タクシー運転手があきれ顔で振り向いた。北京の空港を出て最初の料金所で、長時間止められたときのことだ。ゲートは遮断機が降りたままピクリともしない。

 「しかし1つのトラブルですべてのゲートが止まるなんて」

 と疑問を口にすると、

 「だから中国製はダメなんだよ。いいって思っても3日ももたない。同じ原子爆弾といってもアメリカが破壊できるのは10キロ四方。でも中国は300メートルだ」

 と軽口をたたいた。

 続いて話題が香港のデモになったとき、運転手は前を見て「おっ」と声を上げた。

 「見えるか? 軍の車列だ。これ、原因は機械の故障じゃないな。交通規制だ。もうすぐ建国70周年だ。あの軍事パレードのためだ」

 見ると渋滞した車の隙間から、迷彩柄のシートをかぶせた重厚なトラックの列が料金所の向こうを移動しているのが目に入ってきた。

 渋滞に飽き、車を降りて、たばこを吸っていた運転手たちもポカンとしてそれに見とれた。

 およそ5分くらいで車が流れはじめると、運転手は、「これだよ。庶民は我慢するしかない。香港のヤツらは騒いでいるけど、あいつらが騒いでいるようなことでデモするなら、オレたちは365日ずっとデモだ」

 といって笑った。

 どうといった内容ではないが、香港との距離感が伝わる会話だった。

 日本で香港の報道を見ていると、まるで中国全土があのデモで揺さぶられているかのような印象を受けるが、北京に来ると、逆に香港の「遠さ」を実感させられる。

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