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【昭和のことば】主に芸能界で使われていた隠語から… タコが泣くのよ(昭和58年)

 いま、往年の名作、NHK朝の連ドラ『おしん』が再放映され、新たな話題となっている。このことばは、おしんの若い頃を演じた田中裕子のCM(サントリー『樹氷』)の中のセリフである。昭和58(1983)年、コピーライター、仲畑貴志氏の作品。

 「タコ」とは、「骨のないダメなヤツ」ほどのニュアンスで、主に芸能界で使われていた隠語が表に飛び出した格好となった。

 この年の主な事件は、「中川一郎自民党代議士、急死」「横浜市浮浪者連続殺傷事件で、中学生を含む10人逮捕」「中国自動車道全通」「東京ディズニーランド開演」「戸塚ヨットスクール校長、傷害致死容疑で逮捕」「死刑囚再審の免田事件で初の無罪判決」「大韓航空機、ソ連空軍機に撃墜され269人全員死亡」「東京地裁、ロッキード事件判決公判で田中角栄に懲役4年の実刑判決」「静岡県掛川市のレクリエーション施設『つま恋』でプロパンガス大爆発」など。

 この年の映画は『戦場のメリークリスマス』(大島渚監督)。テレビでは『金曜日の妻たちへ』『ふぞろいの林檎たち』が放映された。

 この「タコ」という言い方。仕事のできる人物やいまで言うところの「意識高い系」の人々から見ると、分かりやすい侮蔑のことばではあった。だが、「タコでもいい」「本当はこれを笑っている俺もタコなんだよ」という昭和の温かさにあふれていることばに聞こえる。

 それは女優・田中裕子のなせる技かそれともかすかに残っていた「時代のぬくもり」だったのだろうか。強者を舞い上がらせるより弱者をふんわりと包み込む。そんな社会への思いを込めた流行語だと思うのは、うがち過ぎだろうか。(中丸謙一朗)

 〈昭和58(1983)年の流行歌〉 「矢切の渡し」(細川たかし)「めだかの兄妹」(わらべ)「さざんかの宿」(大川栄策)

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