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【軍事のツボ】井上大将の肉声テープ見つかる(下) (1/3ページ)

 海上自衛隊第2術科学校(神奈川県横須賀市)の資料室から発見された井上成美・元海軍大将の肉声テープ。長年再生されたことがなく、内容も不明だった。再生にはフジテレビが協力したものの、苦労がつきまとった。

 3本のテープはオープンリール式。意外なことにフジテレビでもオープンリール式の再生機は現在、使われていない。

 「テレビ局もデジタル化が進んで、アナログ方式のオープンリールテープはずいぶん前から使っていない。持ち運びできる再生機は局中探して1台残っていただけだった」とフジテレビ技術局制作技術統括部の竹下博英音声担当部長。

 この1台を同校に持ち込んだが、ここでも問題が。テープの再生速度が合わず、再生しても音声が聞き取れなかったのだ。オープンリール式はテープの走行速度の規格が複数あるのだが、持ち込んだ再生機は放送局用に早い速度の規格に固定されていた。一方で井上元大将のテープは遅い速度で録音されていた。

 ここで竹下氏は一計を案じた。テープを速い速度で再生し、そのままデジタル化してハードディスクに記録。局に持ち帰ってコンピューター処理によってテープ録音時の速度に落として再生することにした。

 ところが、また壁が立ちはだかった。プロ用の音響機器では音程、再生時間など細かく調整ができる。かえってそれが仇になった。「本人の声を聞いたことがないので、何を基準にすれば本来の井上元大将の声として再生できるのか迷った」(竹下氏)。

 答えは意外なところで見つかった。悩んだ挙げ句、パソコン用のフリーソフトを試した。これは音程や長さなどがあらかじめ設定されている簡易なものだったのだが、逆にそれでうまくいった。

 井上元大将が戦後自宅で開いていた英語塾の元塾生3人は、再生されたテープを聴いて「井上先生だ」と太鼓判を押した。それを聞いた竹下氏は「安心しました」と安堵の表情を浮かべた。

 テープは長年巻き直さないと磁気が他の面にも転写して音が混ざってしまうが、そのような現象はなかった。「保存状態が良くないとサビのようなにおいがするが、そんなにおいもなかった」(竹下氏)。

 再生されたテープからは、井上元大将の生き方、哲学を知ることができる。教育についての思想は9月26日にサンケイスポーツ紙面とウェブサイト「サンスポ・コム」に掲載の記事で触れたが、さらに英語教育についてみると、兵学校長時代、陸軍士官学校で入試の英語を廃止したことから海軍兵学校でも優秀な生徒を確保するためとして英語の廃止が検討されたことがあった。教官会議でほぼ全員が廃止に賛成したものの、井上大将は強硬に反対し、“拒否権”を発動した際のことを語っている。

 《戦争は勝っても負けても英語の話せないような士官はここで養成したくないと。入学試験のときにすでに英語をやめるなんて、そんなことは絶対にいかんと。これは君たち全員が私に食ってかかっても私は譲らんぞ。英語の試験はやる。教頭もびっくりしちゃって》

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