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【語り継ぎたい天皇の和歌】大嘗祭の復活に御尽力された桜町天皇

 いよいよ来週22日には国内外の賓客を迎え、皇居で「即位礼正殿の儀」が催されます。古式装束「黄櫨染御袍(こうろぜんのごぼう)」に身を包まれた今上天皇が「高御座」にお立ちになられて即位が宣言されます。

 代替わりのこうした大きな儀式を前に、今回は第115代桜町天皇の御製(和歌)を紹介します。というのも、掲出歌は桜町天皇の即位の際の一首だからです。来年が生誕300年となる桜町天皇は、江戸時代(8代将軍吉宗の時代)の天皇です。先帝の世に再絶した大嘗祭の復活に御尽力された天皇として知られています。

 来月14、15日に行われる大嘗祭は、天皇が臨む祭祀の中でも特に重要なものだと語り継がれます。「禁中並公家御法度」のあった時代。桜町天皇の第一皇子だった桃園天皇の時代には尊王論を説いた竹内式部などが処刑され(宝暦事件)、さらには尊王思想を貫いた山県大弐も処刑されています(明和事件)。こうした時代の中で朝議を復興させた桜町天皇。このような尽力がなければ、皇位継承の儀式が現代まで受け継がれることはなかったかもしれません。

 皇位継承の大きな儀式を迎える今、あらためて桜町天皇のことを我々は知るべきなのだと思います。掲出歌は、『新古今和歌集』にも収められた仁徳天皇の名高い「高き屋にのぼりて見れば煙たつ民の竈(かまど)はにぎはひにけり」が踏まえられています。「煙があちこちから立ち昇り、民の竈が豊かになったと聞くことを楽しみにしている」という歌意です。民の暮らしがより豊かになることを願った桜町天皇には「君も臣(おみ)も身をあはせたる我が国の道に神代(かみよ)の春や立つらむ」(君臣の心が一つになったとき、そこにはじめて神代さながらの日本の春が実現していく」という作品もあります。

 令和の新天皇は即位に際して、どのような御製をお詠みになるのでしょうか。その御製は今後国内外で語り継がれるものになると思います。皇位継承儀式が注目される今、あらためて御製にも世界中の人々に注目してほしいと存じます。(歌人、作家・田中章義)