記事詳細

日本人の賃金が増えない根本理由 「内部留保優先の経営」から脱却せよ (5/5ページ)

 では、一方の労働分配率がなぜ上がらないのか。

 ひとつに働く側の主張が弱まっていることがあるかもしれない。毎年年末に厚生労働省が発表する「労働組合基礎調査」によると、18年6月30日現在の労働組合の組織率は17.0%。労働組合に入らない働き手が増え、加盟率が年々低下しているのだ。物言う株主が増えたように、物言う働き手が増える必要があるのかもしれない。

 「付加価値」をいかにして増やしていくか

 ただし、「労働分配率」を金科玉条のように考えるのは問題だ。企業収益が落ち込み、もともと生み出す付加価値が減れば、労働分配率は逆に上昇するからだ。リーマンショックの後などはむしろ労働分配率は上がった。だからと言って、働く人たちの給与が増えたわけではない。

 何よりも大事なのは、企業が分配の原資である「付加価値」をどうやって増やしていくか。付加価値を増やして、それを人件費として分配していくことこそ、企業の重要な役割だろう。日本企業は付加価値が低いと言われ続けている。特に、運輸や小売り、外食、宿泊といった産業では、国際的に見て低付加価値産業だと言われ、その結果、低賃金に喘(あえ)ぎ、人手不足に陥っている。どうやって日本企業の付加価値を高めていくのか。この連載で考えていくことにしたい。

 著者プロフィール

 磯山 友幸(いそやま・ともゆき)

 経済ジャーナリスト。1962年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。日本経済新聞で証券部記者、同部次長、チューリヒ支局長、フランクフルト支局長、「日経ビジネス」副編集長・編集委員などを務め、2011年に退社、独立。著書に『国際会計基準戦争 完結編』(日経BP社)、『「理」と「情」の狭間 大塚家具から考えるコーポレートガバナンス』(日経BP )、『2022年、「働き方」はこうなる 』(PHPビジネス新書)、共著に『破天荒弁護士クボリ伝』(日経BP )などがある。

ITmedia ビジネスオンライン

関連ニュース