記事詳細

【大前研一 大前研一のニュース時評】ウクライナ大統領の憂鬱… 和平交渉などでロシアに主導権握られ、トランプ大統領の「疑惑」にも引っかき回される (1/2ページ)

 この5月、圧倒的支持で就任したコメディアン出身のウォロディミル・ゼレンスキー、ウクライナ大統領が、ロシアと米国に翻弄されている。

 同大統領の願望は、ロシアから離れて欧州の一員になることだが、東部ルガンスクとドネツク地域の和平交渉などでロシアに主導権を握られている。ルガンスクとドネツクの一部地域はロシアへの編入を求めて分離・独立を宣言し、2014年以降、ウクライナ政府と親ロシア派武装勢力が戦闘状態だ。

 10月1日、ベラルーシの首都ミンスクで兵力の引き離しによる停戦と、親ロ派の占領地域に「特別な地位」を付与することで合意したものの、いまだに砲撃は収まっていない。

 合意は15年にウクライナと露独仏の首脳が集まって交わした停戦合意協定「ミンスク合意」に基づいたもの。ここはミンスク合意に戻り、露独仏と早期に首脳会議を開き、兵力、重火器の引き離しを履行させるしかない。

 ロシアはウクライナ領のクリミア半島が独立し、その後ロシアへの編入を決議したのを受けて14年にロシア領とした。また、親ロ派勢力を通じてドンバス地方と呼ばれるウクライナ東部の一部を実効支配している。

 しかし、ウラジーミル・プーチン大統領は、クリミア半島だけで手いっぱいだと思っている。年金やインフラの整備で金がかかり、ドンバス地方全体を領有するだけの体力、資金力はない。

 ウクライナ政府がためて持っているはずの年金をロシアに振り替えるはずもなく、いきなり原資のない人々の福祉を抱え込むのはいかにも重荷だ。ここを突けば、ドンバス地方に独自の自治権などを付与するなどの妥協案で和平会談実現につながるのではないか。

 もうひとつ、ゼレンスキー大統領は米国のドナルド・トランプ大統領の「ウクライナ疑惑」にも引っかき回されている。ウクライナ疑惑とは、トランプ大統領が軍事支援と引き換えに、20年米大統領選で対抗馬となりそうな民主党のジョー・バイデン前副大統領の次男、ハンター氏の汚職捜査をするよう圧力をかけたというもの。

関連ニュース