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【富坂聰 真・人民日報】米国の焦りと中国の緩やかな“脱米”で貿易戦争は一時休戦? (2/2ページ)

 一方の中国は、緩やかな“脱米”という消極的な選択に傾きながら、決定的な対立は避けたいのだから、折り合えないはずはない。

 しかも中国には豚を大量に買う動機もある。アフリカ豚コレラで豚を大量に処分したことで豚肉の価格が上昇。家計を圧迫しているのだ。

 14日付の『中国新聞ネット』によれば、豚肉価格は前年同月比で69・3%の上昇。この影響で食品物価も11・2%の上昇となり、9月のCPI(消費者物価指数)は2013年11月以来の3%台に突入したという。

 日銀が聞けば羨(うらや)む話だが、豚肉好きの中国人には深刻だ。政治への風当たりも強い。だからこそ豚の大量輸入は渡りに船というわけだ。

 1カ月ほど前の記事で「中国が王岐山を投入か」と書いたが、中国側はこの問題で何かの突破口を模索していた。

 興味深いのは8月末のG7(先進7カ国)サミットだ。香港情勢で本来、各国はより強い言葉で中国を牽制(けんせい)するつもりだった。

 しかし、中国との合意の可能性を理由にトランプ大統領が難色を示したとも伝えられる。つまり、このころにはすでに、何らかのメッセージがアメリカに届いていた可能性が高いということだ。一時休戦の範囲だが、ちょっとした春の匂いがしている。

 ■富坂聰(とみさか・さとし) 拓殖大学海外事情研究所教授。1964年生まれ。北京大学中文系に留学したのち、週刊誌記者などを経てジャーナリストとして活動。中国の政・官・財界に豊富な人脈を持つ。『中国人民解放軍の内幕』(文春新書)など著書多数。近著に『中国は腹の底で日本をどう思っているのか』(PHP新書)。

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