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【昭和のことば】時代遅れの男を演じ…鶴田浩二の渋い歌声にしびれた 古い奴だとお思いでしょうが(昭和46年)

 鶴田浩二が耳に手を当てながら前奏部にかぶせつぶやくセリフだ。「古い奴ほど新しいものを欲しがるもんでございます」と続く。前年発売された『傷だらけの人生』(藤田まさと作詞、吉田正作曲)が、この年大ヒット。時代遅れの男を演じる鶴田の朴訥(ぼくとつ)で渋い歌声に、多くの女性や子供たちがしびれた。

 セリフの中の「右も左も真っ暗闇じゃあござんせんか」も殺伐とした時代を反映するように、あちこちで使われた。

 この年の主な事件は、「第一勧業銀行発足、預金高全国1位へ」「天皇・皇后両陛下、初めての広島原爆慰霊碑参拝」「横綱大鵬引退」「連続女性誘拐殺人事件容疑者・大久保清逮捕」「雑誌『ノンノ』創刊、アンノン族の語が生まれる」「沖縄返還協定調印」「環境庁発足」「全日空機、雫石上空で自衛隊機と衝突」「1ドル=308円の新レート実施」「新宿の派出所裏でクリスマスツリーに仕掛けた爆弾が爆発」「警視庁、極左暴力取締本部発足」など。

 本は大岡昇平『レイテ戦記』、高野悦子『二十歳の原点』。映画は『儀式』(大島渚監督)、『沈黙』(遠藤周作原作、篠田正浩監督)。テレビでは『スター誕生』や『仮面ライダー』が人気。巷では、中山律子ら女子プロボウラーが空前のブームとなっていた。

 鶴田は1924年生まれ。このヒットは彼が47歳の時である。あれから約半世紀。当時、歌詞が理解不能だった子供たちも今や60歳前後だ。もはや「男」をアピールすることさえはばかられる時代。カラオケでこの歌をうなることこそ少ないだろうが、ふと心の中でかみしめる、そんな思い出の歌だ。ちなみにバカボンのパパの愛唱歌でもある。=敬称略(中丸謙一朗)

 〈昭和46(1971)年の流行歌〉 「また逢う日まで」(尾崎紀世彦)、「わたしの城下町」(小柳ルミ子)、「出発(たびだち)の歌」(上條恒彦と六文銭)

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