記事詳細

【日本の元気 山根一眞】47年前の美しいラジオ ソニー製「トランジスタラジオ」 (1/2ページ)

 仕事場の引っ越し作業を開始して数週間になる。通常の引っ越しであれば数日で終わるだろうが、私の場合は書籍、資料、そして機材類が大小4部屋に保存してあり、その総量はとんでもない嵩だ。年齢を考えればすべて廃棄処分する「断捨離」の時とわかってはいるが、捨て難いものが続々と出てくるのだ。

 情報機器の変遷は私の大きなテーマであるため、その歴史を物語る現物を長年にわたって収集してきた。たとえばテープレコーダー(若い世代はそれが何か知らない時代だが)の登場以前、極細の金属線に磁気録音するワイヤーレコーダーの時代があった。文献でしか知ることができなかったワイヤーレコーダーを入手できた時は深く感動。以降、冷戦時代のスパイが使っていたポケットサイズのワイヤーレコーダーなども数台を入手したが、これらを断捨離するのははばかられる。

 ワイヤーレコーダーとともに戦前の鉱石ラジオや真空管ラジオ、米国製の世界初のトランジスタラジオなどとともに、ソニー製トランジスタラジオが出てきた。小型の縦型サイズのAM・FMラジオ(TFM-4500)だ。何とも秀逸なデザインのラジオで愛用していた。

 発売は1972年で、この年にグッドデザインを受賞。ソニーがまだ輝いていた時代の代表作なのだ。かつてのソニー製品は、ひとめ見て「ソニー製だ」とわかる美しい個性あるデザインを踏襲していた。47年過ぎた今でさえ、あの時代のソニーのデザインに勝てる製品はソニー自身も含めて皆無だろう。

 このラジオが発売された翌年、私は8カ月にわたるアマゾやアンデス各地など南米8カ国の放浪から帰国、25歳になっていた。帰国後すぐ週刊誌のフリー記者に復帰したので、ニュースなどの情報収集に欠かせないツールとしてこのラジオをカバンに入れて持ち歩いていた。ネットなど影も形もなかった時代、モバイルでのニュース情報源はラジオのみ。この47年前のラジオに試みに電池を入れ、スイッチを入れたところ、大迫力の美しいサウンドでAM、FMラジオの放送が鳴り出したではないか。

関連ニュース