記事詳細

【勝負師たちの系譜】米長邦雄永世棋聖「相手の大事な将棋ほど、力を出して負かせ」 将棋界に八百長がない原点 (1/2ページ)

 米長邦雄永世棋聖は、将棋界ナンバーワンのパフォーマーだった。

 各界との交際は広く、スポンサーも大和証券はじめ、多くを獲得し、小学生の団体戦には、文部大臣杯を持ってくるなど、棋士としてだけでなく会長としても、将棋連盟の運営に関わった。

 一流棋士でネットを通じ、あれだけ将棋界や自分のことを宣伝した棋士は他にいないかと思う。

 また後輩に対しても、いろいろな言葉を残している。私が最初に影響を受けた言葉は「常に貸し方であれ」だった。いつまでも借り方、つまり人の世話になってばかりでは、いざというときに力になってくれる人はいなくなるという意味で、これは今でも実践しているつもりだ。

 盤上に関しての「相手の大事な将棋ほど、力を出して負かせ」というのは有名な言葉だ。たとえ恩のある先輩の昇級の一番でも、無気力な将棋を指すとか緩めたりすると、その人は一生運が回ってこないという教えで、これは将棋界に八百長がない原点ともなっている。

 とはいえ、A級順位戦最終局の打ち上げで、米長に敗れて名人挑戦者を逃した棋士が、酔いが回って悔しさが込み上げたか、コップを砕いた光景を見たことがある。本人にすれば、相手は関係ない(挑戦か降級に)将棋だから、そっと緩めてくれてもいいのに、と思ったようだった。

 もっともこれに関して私自身は、米長語録よりも山田道美九段の「僕たちは将棋が強いということしか誇るものがないのだから」を生涯の座右の銘にしている。だから私たちは、食べていけるのだということだ。

関連ニュース