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【日本の元気 山根一眞】「リアルなカタチ」として見せる博物館の新しい姿 (1/2ページ)

 「ふじのくに地球環境史ミュージアム」(静岡市駿河区大谷)を訪ねてきた。今年9月、日本博物館協会が日本を代表する博物館として同館を選出、クロアチアで開催された「The Best in Heritage 2019(至高の継承会議)」に参加、プレゼンテーションをしてきたと聞いたからだ。

 日本にはおよそ5700もの博物館があり、私自身、福井県年縞博物館(福井県若狭町)の特別館長の任を受けているだけに、なぜ日本を代表する1館に選ばれたのかを見ておかねばと思ったのである。ちなみに地球環境史ミュージアムの館長は、環境考古学という新しい科学を創世した環境考古学者で「年縞」という言葉の創案者、国際日本文化研究センター名誉教授の安田喜憲さんだ。

 同館は9月に東名高速道路に開通した「日本平久能山スマートインターチェンジ」からクルマで約5分、急な坂道を上がった高台に立地する。静岡県がこの博物館を創立したのは16年3月。日本を代表する1館に選出されたのだから、さぞや大スケールの建屋に最新の展示技術が満ちた施設を想像していたが、坂を上がった駐車場から見えたのは学校の校舎のみ。なんと、博物館は廃校となった県立静岡南高等学校の校舎を約12億円かけてリノベーションして作られたのだ。

 8つの展示室は元の教室を利用。残した黒板に展示解説やメッセージが白墨で書いてあったり、教室の椅子や机を切断し、ひっくり返して展示品台に活用するなど学校の雰囲気を残した工夫には驚いた。それも、「学校の備品をリサイクル利用」というレベルではなく、博物館全体が古い備品什器を駆使した斬新なアート空間に仕上がっているのだ。「お金をかけずに創造した美しさ」には、博物館員と展示制作会社の、どこか居直った大胆な発想があったことを感じさせる。

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