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【昭和のことば】体を震わせ手をこすり合わせながら… ちゃっぷいちゃっぷい(昭和59年)

 50代の筆者的には、たまに「言いそう」になってしまうことばである。体を震わせ手をこすり合わせながら家の中に入るとき、ややふざけ気味に「ちゃっぷいちゃっ~」。いかんいかん、あまりにも古いと正気に戻る。

 使い捨てカイロ「キンチョーどんと」CMのセリフである。設定は縄文時代。桂文珍と西川のりおがふんする「原始人」が雪の中で「ちゃっぷいちゃっぷい、どんとぽっちい(ほしい)」とつぶやく。昭和59(1984)年冬は東京に50回近くの雪が降る寒さで、例年の「暖冬」に慣れきっていた人々を震え上がらせていた。その寒さに乗じ、CMは流行った。

 この年の主な事件は、「三池有明炭鉱火災、死者83人」「『週刊文春』“疑惑の銃弾”報道開始。三浦和義、報道を人権侵害として法務局に申し立て。翌年逮捕」「植村直己、北米大陸最高峰マッキンリー冬季単独登頂成功し、下山途中に消息不明」「グリコ事件発生」「東京高裁、ロッキード事件の小佐野賢治、議院証言法違反で有罪判決」「ロサンゼルス五輪開催」「『投資ジャーナル』グループ摘発で、強制捜査」「全斗煥韓国大統領来日」「第3次中曽根康弘改造内閣発足」など。

 この年の映画は『お葬式』『麻雀放浪記』。岡本綾子が米ゴルフツアーで優勝。浅田彰の『構造と力』が流行し、巷では酎ハイブームが起こった。

 「ちゃっぷい」は縄文時代の発音に近いもので、当時の言語学研究の成果であった。広告業界が猛烈な進化を遂げていた時代。最近は「わかりやすさ」「懐かしさ」(たとえばBGMなど)が先行しがちだが、とんがってるのにしゃれが効いてる、ほのぼのしてるけど感性をくすぐる、今年はそんな往年の勢いを期待したい。(中丸謙一朗)

 〈昭和59(1984)年の流行歌〉 「ワインレッドの心」(安全地帯)「ジュリアに傷心」(チェッカーズ)「娘よ」(芦屋雁之助)

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