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【日本の元気 山根一眞】高齢者でも「成長する脳」 米医学者が公開した「精神的能力のピーク」 (1/2ページ)

 高齢期を迎えた人にとって、「脳」がいつまでも正常に機能してほしいという願いは大きい。私は30代の半ばから40代にかけて、日本や米国の最先端の脳科学の研究者を訪ね歩き多くの記事を書いていた。人の文化的な活動を脳科学でどこまで理解できたのかを知りたかったからだ。

 脳をコンピューターに例えれば、情報処理装置の最小素子に相当するのがニューロンと呼ぶ神経細胞だ(脳細胞)。その数は大脳では約140億個。コンピューターの集積回路は近々「脳を超える」と言われているが、脳の機能は「素子」の数が勝負ではない。ニューロンどうしはコンピューターと同じ電気信号で情報交換をしており、それらを相互に結ぶ「配線」(軸索や樹状突起)が「要」だからだ。

 「脳全体のニューロンの軸索や樹状突起を一直線につなげた場合、100万キロメートルにもなる」(理化学研究所脳科学総合研究センター)。地球と月の距離は約38万キロ。脳にはその3倍の長さの配線コードがぎっちり詰まっているのだ。そのニューロン同士は1000から1万のコードで相互に結ばれていると言われており、その組み合わせ数を、かつてカール・セーガン(米天文学者、SF作家)は「全宇宙の陽子の数を上回る」と説明した。脳が宇宙規模の潜在力を持っていることは間違いないだろう。

 という脳だが、ニューロンは20歳頃から1日に10万個ずつ死滅し続け老化とともに脳全体が萎縮、スカスカになる悲しい宿命にある。ニューロンは再生しない細胞なのだ。

 「それはヤバい!」と思いつつ取材を続けて出会ったのが、東京都老人総合研究所(現・東京都健康長寿医療センター研究所)の脳老化の研究者、故・朝長正徳さんだった。朝長さんは、驚くべき研究成果を話してくれた。80歳で亡くなった老人の脳細胞の培養に成功したが、培養を続けるうちに軸索や樹状突起を出してくるものがあることに気付いたというのだ。

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