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【編集局から】自覚なく連鎖する「誰かが買い占めてからでは…」

 居酒屋で気の置けない仲間としっぽり飲んでいたら、だいぶできあがった連中が入ってきて、近くの席で大声でしゃべり始めた。こちらの会話がかき消されるほどうるさいので、仕方なく声の音量を上げて話す。それに負けじと、周りの席も声のトーンが上がる。そのうち店内全体が、とてつもない騒がしさに-。

 新型コロナウイルスの「感染爆発の重大局面」となった都内で、スーパーの食品売り場に買い物客がごった返している現象は、こんな声の張り合いによく似ています。

 なぜそんなに慌てて買いだめするのか問われれば、大半が「本当はこんなことしたくないけど、先に分別のない誰かが買い占めてしまってからでは遅いから」と答えるのではないでしょうか。

 正直者がバカを見る。その元凶は自分以外の誰かだという言い訳が、自制心を吹き飛ばしてしまう。自覚なく連鎖する、共犯者のできあがりです。強い不安に支配された買い物客の判断力は、居酒屋でメートルを上げる酔っ払いと同程度でしょう。

 そんなご託を並べながら、首都封鎖が現実味を帯びる中で、疎ましいほどの酒場の喧噪さえ恋しくなってきた自分に気づかされます。大勢で呑んで騒げる日常のありがたみを、かみしめられるのはいつの日でしょうか。(運動部・笹森倫)