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【富坂聰 真・人民日報】世界に「法治国家」アピール? 新型コロナ「告発の英雄」医師めぐる調査のウラ (2/2ページ)

 李医師への処分の妥当性に関し正式な調査が入ったのは2月7日のことだ。結論が導き出されたのが3月19日だから1カ月以上だ。同時進行していた別の案件が6日前後で終結していることから見ても異例に慎重だ。

 監察委員会は最終的に李医師へ訓戒処分を下した警官の行為を違法とし逆に処分を下した。処分の理由は、法律の適用、法執行における誤り、そして監督管理不足だ。

 発表を受けて武漢市公安局は、直ちに李医師の家族に謝罪するとのコメントを出した。

 日本のメディアはこのニュースを「習近平指導部に対する批判をかわす狙い」との解説をつけて報じたが、少し違っている。というのも李医師はそもそも日本で知られているような「告発の英雄」ではないからだ。

 公開された調査資料によれば、李医師は仲間内の発信を、勝手にばらまかれてしまい困ったという。また後には自ら「SARS」と伝えたことを慌てて訂正もしている。

 つまり、そもそも告発というくくりで報じたことに無理のある話なのだ。

 ただ処分の撤回にはセレモニーの匂いが強い。何といっても交番に自ら出向いて訓戒書を書いただけの話だ。彼が所属した病院もそれを問題視していない。要するに「オレたち法治国家だよ」というアピールだろう。

 ■富坂聰(とみさか・さとし) 拓殖大学海外事情研究所教授。1964年生まれ。北京大学中文系に留学したのち、週刊誌記者などを経てジャーナリストとして活動。中国の政・官・財界に豊富な人脈を持つ。『中国人民解放軍の内幕』(文春新書)など著書多数。近著に『中国は腹の底で日本をどう思っているのか』(PHP新書)。

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