記事詳細

【大前研一 大前研一のニュース時評】新型コロナと「ボーダレス・ワールド」 サプライチェーンの脆弱さに“自国回帰”の動き加速か (1/2ページ)

 英国の経済紙「フィナンシャル・タイムズ」(FT)は先月30日、「コロナ禍の危ない副作用」と題する記事を掲載した。これは、グローバル時代を論じた拙著「ボーダレス・ワールド」から30年が経過した現在、新型コロナウイルスを引き金にボーダー(国境)がすさまじい勢いで復活しつつあると紹介したもの。

 国際的なサプライチェーン(製品の原材料調達から製造、在庫管理、物流、販売までの流れのこと=供給連鎖)が脆弱だったと判明したことで、保護主義や生産の自国回帰への動きが加速するとみられ、ウイルスが終息した後もグローバルな世界に戻る可能性は低いとしている。

 このコラムを書いたギデオン・ラックマン氏は、英国BBCやエコノミスト誌を経て、現在はFTの外交関係の論評責任者になっている。

 ベルリンの壁崩壊直後に出した「ボーダレス・ワールド」で、私はヒト、モノ、カネが楽々と国境を飛び越える経済のグローバル化、世界の均質化という大きな変化を示し、多国籍企業のトップに大きな影響を与えた。以後、世界はグローバル企業、グローバル経営に向かった。

 この本は、フィナンシャル・タイムズの「『孫子の兵法』以来の50の重要な経営書」という中に「企業参謀」とともに入っている。2冊入っているのは、マネジメント論で知られるピーター・ドラッカーと私だけだ。そういう意味でも懐かしの本だ。

 ラックマン氏は、そんな私も忘れていた本を振りにして、現在は世界が細分化され、完全に国民国家(共通の社会生活を営み、共通の言語、文化を持つ共同体を基礎に成立した国家)に戻っていると指摘している。

 確かに、新型コロナウイルスの影響で世界の秩序は崩れつつある。オルバン・ヴィクトルという極端な考えの首相によって極右国家になったハンガリーは、この非常事態に政府の権限拡大を無期限に引き延ばす法案を可決させ、強権統治を拡大している。

関連ニュース