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【軍事のツボ】なぜ自衛隊から感染者は出なかったのか (1/2ページ)

 新型コロナウイルスの世界中への感染拡大はピークを過ぎつつあるとの見方があるが、少し気を抜くとあっという間に感染者が広がるのがこのウイルスの恐ろしいところだ。そんなウイルスの日本での感染拡大初期に最も注目を集めたのは、クルーズ船、ダイヤモンド・プリンセス号での感染蔓延と、同船に災害派遣され活動を続けながら1人の感染者も出さなかった自衛隊。客船という閉鎖空間の中でいったいどうやって感染を防いだのか。

 英国船籍で米国のクルーズ会社が運航するダイヤモンド・プリンセス号(ダ号、11万5875総トン)は、3711人の乗員乗客を乗せ、1月20日に横浜港を出港した。鹿児島、香港、ベトナム、台湾、那覇とめぐり、2月4日に横浜に戻る旅程だった。1月25日の香港寄港の際、中国系の男性が下船した。この男性は23日から咳が出ていて30日に発熱。2月1日に新型コロナウイルス感染が判明した。

 ダ号にはその日のうちに男性の感染が連絡された。ダ号は予定を変更し、3日深夜、横浜港に入港した。しかし接岸せず大黒ふ頭沖に停泊し、検疫に入った。この間、5日早朝まで船内では自由に行動でき、ショーやブッフェなど船内生活は通常通りだった。これが船内で感染が広がった最も大きな要因の一つとみなされている。

 同日中に最初のウイルス検査をした273人のうち、31人の結果が判明した。10人が陽性。その後、感染判明が続出し、これまでに712人、死者13人に及んでいる。

 アウトブレイク(狭い地域での短時間の感染急拡大、感染爆発)がもはや明らかなダ号への災害派遣命令が、防衛相から自衛隊に出されたのは2月6日。以後、3月1日まで25日間にわたり、陸上・海上・航空の3自衛隊から最多時約190人、延べにして約2700人の隊員が派遣された。任務の内容は、検体採取、医薬品配分、船内消毒、患者搬送、物資搬入などだった。

 活動の際、最も重視されたキーワードは「基本に忠実に、徹底的に」。そしてこれこそが現場で活動した厚生労働省の職員らにまで感染者が出たなか、自衛隊員の感染者はゼロだった“秘密”といっていい。同船への災害派遣部隊指揮官を務めた井内裕雅1佐(48)は「一人一人がやるべきことをしっかり実施して、任務を完遂することができた。これまで実施してきたことに間違いはなかったという自信につながる」と振り返る。

 具体的に何をしたのか見てみよう。まずは(1)手指の消毒。消毒液を手のひらや甲はもとより、盲点になりがちな指先や指の間、手首にも入念に刷り込む。(2)マスク装着の際には手で鼻の部分を押さえて隙間を作らないようにする。外すときには、本体の表面にはウイルスが付着している可能性があるのでひもの部分だけを持つ。(3)宿泊など隊員の拠点にした借り上げフェリー「はくおう」や「シルバークイーン」の船内では、従事する作業の感染リスクの高低によって隊員の生活動線を完全に分けた。