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【警戒せよ!生死を分ける地震の基礎知識】震源地が次々移動の群発地震! 上高地周辺で200回以上発生 (2/2ページ)

 焼岳の現在までの最後の噴火は1962年だった。噴火には至らなくても、地下にあるマグマ関連の事件が起きたことがある。近くのトンネル工事で95年に水蒸気爆発があって4人がなくなった。いまでも焼岳の山頂付近には有毒ガスが出続けている。地下のマグマはまだ生きているのだ。

 近年は群発地震が起きても噴火には結びつかないことも多かった。最近の群発地震は2014年、その前は1998年だった。

 98年の大規模な群発地震には、いまだにナゾがとけない不思議なことがあった。

 群発地震は98年8月、上高地で始まった。

 険しい北アルプスの山岳地帯ゆえ地震観測所は離れたところにしかなかった。このため急遽、大学や気象庁の研究者が現地に向かい、上高地や焼岳で臨時に地震計を置きはじめた。

 だが地震計を置き終わる前に群発地震の震源は上高地を離れて北の穂高(ほだか)連峰や槍ケ岳の地下へ移動してしまった。10キロあまりを数日の間に動いたのだ。

 そのうえ8月半ばになると活動域のいちばん北で、群発地震で最大の地震M5・4が起きた。臨時に置いた地震計からはもっとも遠い場所だった。

 それだけではなかった。9月に入ると震源は北アルプス沿いにさらに北へ、鬼ごっこでもするように県境を越えて富山県に入った。上高地からは20キロ以上も北上したことになる。

 そして、同年秋になると群発地震は長野・富山の県境付近で消えてしまった。まるで、臨時に置いた地震計を地震が嫌って逃げたように見える。

 群発地震には分からないことがまだ多い。

 ■島村英紀(しまむら・ひでき) 武蔵野学院大学特任教授。1941年、東京都出身。東大理学部卒、東大大学院修了。北海道大教授、北大地震火山研究観測センター長、国立極地研究所所長などを歴任。著書多数。最新刊に『多発する人造地震-人間が引き起こす地震』(花伝社)。

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