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【こんな社会をちょっと良くする話】ソーシャルディスタンス、医療にも応用が進む! 「いい選択」へそっと後押し「ナッジ理論」 (2/2ページ)

 ▽2色の制服

 熊本市の病院、熊本地域医療センターは2014年、看護師の制服を日勤は赤、夜勤は緑に色分けした。夜勤明けの看護師が日勤中のナースコールや電話を取れない事情が周囲に伝わらないことを改めたいと、広田昌彦院長(当時)が発案したという。

 これが思わぬ効果を生む。「職場に残っていると目立つ。交代、引き継ぎも容易で、残業が劇的に減った」と大平久美看護部長は言う。

 先輩に気兼ねなく、仕事が終われば帰るようになった。医師は、前夜の患者の様子を聞いたり、日中の処置を指示したりするのに、誰に声を掛けるか迷わなくなった。効果は波及し、毎年数十人いた離職者がほぼいなくなり、業務がいっそう円滑に回るようになった。

 この方式の成功について小池さんは「簡単で分かりやすく、違いを強調して残業を見える化したことで、ナッジの効果が出た」と高く評価する。

 ▽倫理も問われる

 ただ、小池さんは「この職場では業務改善の必要性についての共通認識があり、そのための人的資源が整っていたからこそ成果が表れた。すべての職場で効果があるわけではない」と指摘する。

 重要なのは「何が障害になり、何が求められているか」をあくまで個別の事例ごとに精査しておくことだ。誰にでも、どこででも効く「万能のナッジ」はない。

 「使い方によっては意に反した選択への誘導、強制になりかねない。何がより良い選択なのか、倫理的に妥当な提示なのかどうか、常に問われている」とくぎを刺した。

 世界では、コロナの感染防止のために知らず知らずに社会的距離を取ったり、消毒や手洗いをしたくなったりするちょっとした工夫が多数編み出されている。小池さんの研究室では、こうしたナッジの応用例を探し、日本に導入するための調査を始めている。

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