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【軍事のツボ】ブルーインパルス、五輪マークと東京上空飛行の舞台裏 (3/3ページ)

 「今回の飛行では、複数の施設上空を目標として、隊形を保持しながら正確に飛行することが難しい点だった。また、注意を払ったのは飛行の際の安全確保。特に、報道のヘリコプターや飛行経路の周辺を飛行する他の航空機などの安全確保に万全を期した」

 直前の5月18日には、カナダ空軍アクロバット飛行チーム「スノーバーズ」の1機が、コロナ禍に立ち向かう医療従事者激励のための展示飛行の際に墜落。女性パイロット1人が死亡する事故が発生していた。「安全」は絶対条件だった。

 チームは前日、ホームグラウンドの松島基地から入間基地に移動した。そして当日。快晴だった。隊員らは「最前線の医療現場などで対応に当たっている人への敬意と感謝の気持ちを一人でも多くの人に届けたい」という気持ちを改めてかみしめた。

 飛行前の準備は淡々と進む。海野3佐は5番機の後席に収まった。飛行前も飛行中も、五輪マークを描いた時と同様に「落ち着け」「冷静に淡々と」と自らに言い聞かせていた。そして都心上空に到着した。

 入間基地の滑走路に着地したとき、無事に任務を遂行できたことに一安心した。しかし余韻に浸る暇はなかった。「すぐ松島基地に戻ることになっていたので、その計画を考えていた」という。

 飛行コースは新型コロナウイルス感染者が入院していた病院の上空を可能な限り飛ぶよう計画された。多数の医療従事者らと同時に、実に多くの人がブルーを見て、それぞれの思いをはせた。

 ブルーが使っている練習機T-4は2019年4月にエンジントラブルが発生し、全機のエンジンを順次改修している。そのためパイロットの訓練に回す機体確保が優先され、ブルーは6機での編隊飛行が6月からできなくなった。5月の東京上空飛行が当分の間の6機編隊の見納めだった。だが、漫然と時を過ごすわけにはいかない。

 「医療従事者だけでなく、私たちの飛行を見た人が前向きな気持ちになったことは嬉しい。新型コロナウイルス感染拡大は未だ収束していないが、また展示飛行を見てもらえる機会に向けチーム一同、全力で万全の準備を行っていきたい」

 ブルーは部隊としてこうコメントして、未来を信じ、なすべきことをなすことが、コロナ禍を克服していく道筋だと示してくれた。(サンケイスポーツ・梶川浩伸)

【ブルーインパルスの東京上空飛行当日のスケジュール】

 06:00 起床

 06:30 気象隊で天候を確認

 08:00 飛行班朝礼

 08:30 気象ブリーフィング

 09:00~10:00 関係部署との最終調整

 10:20 指揮系統や指導事項などの伝達と飛行前ブリーフィング

 12:00 飛行準備開始

 12:30 離陸。都心上空へ

 13:20 入間に着陸

 13:50 飛行後ブリーフィング

 14:15 松島基地への帰投準備