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【警戒せよ!生死を分ける地震の基礎知識】新しい彗星の出現と太陽系の謎 ハレー彗星以来の明るさ「ネオワイズ彗星」 (2/2ページ)

 このほか、地球上の空気が5分間ほどなくなるという別の噂も広まった。裕福な者は、当時自動車はほとんどなかったから自転車のチューブを買い占めてチューブ内の空気を吸って一時的な酸素の枯渇に備えた。チューブを買えない者は水を張った桶で息を止める訓練をした。

 だが、地球が尾の中を通過しても、ハレー彗星のガスは地球の厚い大気にはばまれて地表に到達することはなかった。

 ハレー彗星が現れた最新の1986年にはもちろんこの種の噂は消え、天体ショーとして楽しんだ時代になった。

 ところで、彗星は太陽系が誕生した時期に生まれた天体だ。それゆえ彗星が太陽熱で溶けて吹き出すジェットのガスやダストを分析すれば、太陽系ができた当時のことを知る手がかりになる。彗星核の表面が溶けてダストが放出されるが、ダストを望遠鏡で見ることによって、ダストがもともと彗星核にあった時の状態を知ることができる。

 今後も、ネオワイズ彗星が遠ざかるときに色と偏光データにどんな変化が起きるのかを観測して彗星内部の化学成分に変化があるか調べる。

 ハレー彗星が次に見られるのは2061年だが、ネオワイズ彗星の次は6800年後だ。めったにない機会を天文学者は追っているのである。

 ■島村英紀(しまむら・ひでき) 武蔵野学院大学特任教授。1941年、東京都出身。東大理学部卒、東大大学院修了。北海道大教授、北大地震火山研究観測センター長、国立極地研究所所長などを歴任。著書多数。最新刊に『多発する人造地震-人間が引き起こす地震』(花伝社)。

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