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【東日本大震災から9年半 忘れない、立ち止まらない】阪神大震災の語り継ぎと遺族の交流に尽力 神戸市NPO「HANDS」初代理事長・白木利周さん (2/2ページ)

 「古い人間がいると足を引っ張る」と言い、12年には、あえてHANDSを離れたと聞いた。組織の“血”を入れ替えなければ、活動はやがて廃れると危惧したのだと思う。

 それでも、不帰の客となるまで白木さんは、震災の語り継ぎと遺族の交流に力を尽くした。体調を崩してからも、「亡き息子に『まだすべきことがある』と言われる」と、残された者の使命を負い続けた。

 開発復興に偏る都市計画や、被災者の自死、孤独死…兵庫と同じ課題が東北で持ち上がる度、白木さんは「なんで神戸の経験が、東日本で生かされないんや。俺たちの苦しみは無駄だったんか、伝えてきたことに意味はないんか」と悔しがった。

 「時々むなしくなる。でも、やめるわけにはいかへん」

 若い世代を巻き込むこと。遺族が悲しみを共有できる場所を守り続けること。倦(う)まず、たゆまず「伝える」を続けること…白木さんに教わったことは、たくさんある。「あんたら地元メディアがしっかりせな!」という活が、今も聞こえてくるようだ。

 「無駄なんかじゃなかったよ」。そう報告できるようにしたい。

 白木さんに強く背中をたたかれたあのとき、私は、彼が背負っていたものを少し分けてもらったのだ。

 ■鈴木英里(すずき・えり) 1979年、岩手県生まれ。立教大卒。東京の出版社勤務ののち、2007年、大船渡市・陸前高田市・住田町を販売エリアとする地域紙「東海新報」社に入社。震災後、記者として9年間、被害の甚大だった陸前高田市を担当。現在、同社社長。

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