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【東日本大震災から9年半 忘れない、立ち止まらない】9年半たっても止まったままの時間 “絆の種”が咲かせる「はるかのひまわり」 (2/2ページ)

 「孫はまだ保育園児だったのにね」

 胸をえぐる告白はいつも、こんなふうに何気なく、不意打ちで語られる。

 それが毎年ヒマワリを咲かせている理由だ、とは言われなかった。だが、腑に落ちるものがあった。

 「食べた? じゃあ、花っこ見てってよ」という女性の笑顔に、ただ「ウン」とうなずく。高く伸びたヒマワリを一緒に見上げながら「…うーんと…。…また…会いさ来ても…いいべか?」と聞くと、女性は「いいよ」とほほ笑んでくれた。

 あの日から9年半たっても、時々、止まったままの時間に出合うことがある。

 でも、9年半たってもまだ、新しい喜びに出合うこともできる。

 「やっと、自治会館ができるんだよ」。先日はそう言われ、新しい地区公民館の建設現場に行った。大津波で、118戸から4戸にまで減ってしまった地区。「ようやく16戸まで戻ったから、そろそろ集まれる場所つくるべと思ってさ」。

 やっとここまで来た、こんなこともできるようになった…そんな喜びを、一つも見逃したくないと思う。

  =おわり

 ■鈴木英里(すずき・えり) 1979年、岩手県生まれ。立教大卒。東京の出版社勤務ののち、2007年、大船渡市・陸前高田市・住田町を販売エリアとする地域紙「東海新報」社に入社。震災後、記者として9年間、被害の甚大だった陸前高田市を担当。現在、同社社長。

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