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【軍事のツボ】ミッドウェー海戦と暗号 (1/2ページ)

 第二次大戦のミッドウェー海戦(1942年6月)を描いた米映画「ミッドウェイ」が9月11日に封切された。日米の空母を中心とした機動部隊の戦いだが、急降下爆撃など派手な戦闘シーンの一方、地味な「暗号」が大きなテーマになっていることに興味を引かれた。

 ミッドウェー島の浄水装置が故障したと偽情報を米軍が流し、傍受した日本軍が「AFで浄水装置が故障している」と通信したことから、次の攻撃目標「AF」がミッドウェー島だと割り出したという有名なエピソードが取り上げられている。キーマンとして太平洋艦隊情報主任参謀エドウィン・レイトン中佐と部下の戦闘情報班(HYPO)の班長ジョセフ・ロシュフォート少佐にスポットを当て、暗号解読がデータや資料の蓄積、読み込みと関連付けという地味な作業の継続でもあるという本質を描いている。

 映画では敗北が分かったとき山本五十六大将が「我々の攻撃は読まれていたようだ」と述べているが、米軍にJN25と呼ばれていた日本海軍の暗号が解読されていることに日本側は気が付いていなかった。そのために後に山本大将は搭乗機が撃墜されて戦死する。

 日本軍の情報軽視体質は、海軍乙事件(1944年3月)でより深刻に表れる。連合艦隊司令長官、古賀峯一大将らの搭乗機が遭難し行方不明となるなどした。このとき新Z号作戦計画書、司令部用信号書、暗号書が敵の手中にわたった可能性が高いことは明らかであったにもかかわらず、事件を隠ぺいして、作戦も暗号も変えることはなかった。これがマリアナ沖海戦(1944年6月)での大敗北につながる。日本軍のマリアナの基地航空兵力と機動部隊航空兵力の挟撃作戦を知っていたので、米第5艦隊はそれを避けることができた。

 情報に対する認識の甘さは日本人の体質かもしれない。言葉にもそれが表れているのではないか。日本語では「情報」と一言だが、英語では「inteligence(インテリジェンス)」と「informatio(インフォメーション)」がある。前者は「系統立てて収集されたり分析されたりしている有用な情報」のことで、後者は「単なる情報」を意味する。

 さらに情報を扱ううえで不可欠な暗号についても「code(コード)」と「cipher(サイファー)」に分かれる。コードはある句や語を別のものに置き換えることで、「12月8日に布哇(ハワイ)海戦を決行せよ」という命令を「ニイタカヤマノボレ1208」とすることや、ミッドウェー海戦時の「AF」などがその例。サイファーは通信文の文字を1対1で別の文字や数字で置き換えること。「ニイタカヤマ」を例えば50音で1文字ずつずらして「ヌウチキユミ」にするといった具合だ。暗号文はコードとサイファーを組み合わせて作られる。

 日米の戦いにおける暗号戦を描いた映画には「ウインド・トーカーズ」もある。米海兵隊はネイティブ・アメリカンのナバホ族に目を付けた。当時ナバホ語を研究した外部の人間は28人だけで、その中に日本につながる人物はいないことが判明したので、傍受されても理解できないと考えた。そこでナバホ族を「コード・トーカー(暗号話者)」として採用し、通信文をナバホ語に置き換えて通信することにして、ガダルカナル島の戦い(1942年8月~43年2月)から本格運用した。

 第二次大戦当時の有名な暗号戦には、ドイツのエニグマ暗号機を巡る戦いもある。イギリスは正面から解読に取り組む一方、奪取作戦も複数実行し、成功させた。まず1941年5月に防備の手薄な気象観測船「ミュンヘン」を襲撃して奪取。さらに4日後には高度な暗号を使うUボート作戦を知るために、Uボートそのものを奪う作戦に出る。英駆逐艦などと交戦して浮上、放棄されたU110に乗り込んでエニグマ暗号機と暗号変換に欠かせないローターという部品などを押収した。