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【日本の元気 山根一眞】1300年のハンコの歴史と伝統は失いたくない (1/2ページ)

 「ハンコ」の廃止へ向けた議論が始まっているが、そもそもハンコとは何か。調べ始めたところ、メモ書きがノート数十ページ分にもなるほどの興味を抱いてしまった。

 ハンコは使用目的別に名称が異なり、印鑑、実印、銀行印、認印、官印、御璽、さらに三文判、朱印などがあり、認証レベルによって押印、捺印、調印、さらに割印だの捨印だのと異なる呼称が使い分けられてきた。領収書や請求書は「押印」(記名押印)、本人認証の直筆署名の脇に押すのは「捺印」(署名捺印)と明確な区分があるのだ。

 材料では、最高素材の象牙に代わり代用素材としてエブリナ(人造象牙)が登場し、黒水牛の角、ツゲ、水晶など実に多様だ。素材によって書類に押した時の印影(印章)の美しさは異なり、摩耗や紫外線による劣化の違いも出る。素材が変質すれば本人認証=ハンコの役割が果たせなくなるため、高耐久性と印影の美しさの追求がハンコの技術開発の歴史だったとも言えそうだ。

 ハンコのパートナー、朱肉は中国の南北朝時代(5-6世紀)が起源で(「印泥」とも呼ぶ)、日本では8世紀の奈良時代が原点だ。

 「ハンコと朱肉」は「和紙と墨」の関係と同じ。腐敗せず紫外線でも印影が劣化せず、捺印後の乾燥時間への考慮など培われてきた技術蓄積の成果に、私は何の敬意も払わず使ってきた。伝統文化を守りつつ新しい挑戦を続けてきた印鑑や朱肉の職人の皆さんたちに、遅まきながら敬意を表したい。

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