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【昭和のことば】戦後の混乱期にラジオで始まったご長寿番組 「のど自慢」(昭和21年)

 最後まで歌いきれば万々歳、豪華な鐘の音でご満悦だが、途中で鳴ってしまえば歌は打ち切り、その場でガックリ。おなじみ「NHKのど自慢」である。何度かの改編・番組名変更などを経て、現在も続いている長寿番組。その前身であるラジオ番組「素人のど自慢音楽会」が、この年から始まった。

 当時、横浜の「魚屋の娘」であった9歳の美空ひばりも出演した。この番組を模して、全国各地の町内会や慰労会などで「のど自慢」が催された。「のど自慢」という言い方は、既存の「腕自慢」に倣ったことばとされている。

 この年の主な事件は、「天皇陛下、神格否定の詔書発表(人間宣言)」「GHQ、軍国主義者の公職追放を指令」「物価統制令公布、施行」「幣原内閣総辞職」「極東国際軍事裁判所開廷(東京裁判)」「第1次吉田茂内閣成立」「米国、ビキニ環礁で原爆実験」「経済団体連合会創立」「日本国憲法公布」など。

 この年、初の接吻映画『はたちの青春』が封切られた。本は尾崎秀実の『愛情はふる星の如く』、米国雑誌『リーダーズ・ダイジェスト』(日本語版)が創刊された。戦後の混乱期であり、人口調査で失業者数推定600万人と発表、「空いているのは腹と米びつ、空いてないのは乗りものと住宅」ということばが生まれた。

 アコーディオンなどの簡易な伴奏に合わせて気持ちよく「人前で」歌う。カラオケマシーンの登場以前からあったこの日本人の「のど自慢」文化に、あらためて気付かされる。度胸試しに目立ちたがり、クラスや町内会の人気者じゃ飽き足らず、プロを目指して本気モード。他国からはシャイで主張の少ない国民性と思われているが、こと「のど」に関しては、大いに自慢気なのである。 =敬称略

(中丸謙一朗)

 〈昭和21(1946)年の流行歌〉 「東京の花売娘」(岡晴夫)「啼くな小鳩よ」(岡晴夫)「みかんの花咲く丘」(川田正子他)

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