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【日本の元気 山根一眞】科学技術で歴史検証「日本史サイエンス」に感動 (2/3ページ)

 だが播田さんの検証では、それは不可能だった。大型軍船300隻の建造には15万立方メートルの加工前木材が必要で、その用材を得るための森林面積は700ヘクタール(東京ドーム150個分)だが、伐採可能地はより遠方でさらに広い森林面積が必要だ。

 用材は伐採後1年間は自然乾燥しなければ曲りやゆがみが生じるが、6カ月で建造したのであれば水漏れが避けられなかったはず。計算では原木の伐採と運搬、船大工らの総勢は1日6万人が必要で、それは『高麗史』の記述の2倍になる。

 つまり、建造できた大型軍船は150隻程度。かつ高麗の当時の造船技術水準は低く造船技師も不足していたため、大型軍船は単純な高麗型の川船形状にせざるを得なかった。

 播田さんは造船技術と建造マネジメント、さらに専門家並みの技術をもつ造船コンピューターグラフィックスを駆使し、蒙古船団の脆弱(ぜいじゃく)さを明らかにしていく。蒙古軍がなぜ博多湾の軍船に撤退し「神風」で壊滅したのかの緻密な「計算」は圧巻。6カ月期限の建造が遅れたことと「神風」の関係も明解だ。

 播田さんは同様の方法論で2万の兵による秀吉の大返しや戦艦大和の検証を進めているが、それらの仮説は歴史家や小説家が描いてきた通説が山と積まれたちゃぶ台がドーンとひっくり返ったような思いにさせられた。こういう科学技術的な視点での歴史の再検証議論が広がることを期待している。

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