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【政界マル秘紳士録】自民党・岸田文雄前政調会長 続く試練打破へ「良き軍師」を周辺に置けるか 昨年の総裁選で情報力不足と戦術立案能力欠く

 岸田文雄前自民党政調会長は、昨年9月の自民党総裁選で2位になったが、その後、選挙対策や公認調整をめぐり、指導力に疑いが持たれている。

 その1つは、連立与党を組む公明党が斉藤鉄夫副代表(中国比例)を、一方的に次期衆院選の広島3区に擁立することを決めたことである。

 同選挙区は、一昨年の参院選広島選挙区をめぐる大規模買収事件で公判中である河井克行元法相の選挙区だ。同氏は岸田派所属ではないが、「広島県は岸田派(宏池会)の牙城」との理由で、岸田氏の対応が注目されることとなった。

 しかし、公明党が候補者擁立の理由としている大規模買収事件は、無理やり2議席獲得を狙った二階俊博幹事長ら党執行部に背景があり、岸田氏の責任ではない。さらに、同県連会長は宮沢洋一元経産相で、岸田氏は県連顧問に過ぎない。にもかかわらず、なぜか岸田氏に話が振られている。

 もう1つは、衆院静岡5区の公認問題である。同区自民党支部長の吉川赳内閣府政務官は岸田派の若手だが、小選挙区で3連敗している。そこに、民主党から民進党、希望の党と渡り歩きながら吉川氏を破ってきた無所属の細野豪志氏が二階派に所属し、自民党からの出馬を意図しているのである。

 もし、選挙を仕切る二階氏が、自民党にも所属していない細野氏を公認するようなことになれば、岸田氏の派閥領袖(りょうしゅう)としてのメンツは丸つぶれとなる、というわけである。

 だからといって、岸田氏が首相候補から外れるかと言えば、答えは「否」である。首相や総裁は公認調整や選挙対策が本務ではなく、国の行く先を示し、国民をまとめていくことが仕事である。

 安倍晋三政権の下で外相を4年、自民党の政策責任者である政調会長を3年も経験した岸田氏が、その有資格者であることに変わりはない。「政界、一寸先は闇」の世界である。万が一、菅義偉首相に何かがあった場合、現時点では、岸田氏はやはり最有力候補者なのである。

 昨年の総裁選では岸田氏の対応が遅れ、菅氏の後手に回った観は否めない。情報力不足と戦術立案能力を欠いていたというべきであろう。諸葛孔明不在の劉備玄徳のごとく、優秀な武将がいても軍師不在では戦いには勝てないのである。

 歴代の政権には、必ずそうした役回りを果たす立場の存在がいた。現時点の岸田氏には、そうした存在はいないように見える。

 これでは何度チャンスがめぐってきても、昨年と同じことになるだろう。「良き軍師」を周辺に置けるかどうか。岸田政権実現の成否は、そこにポイントがあるように思える。

 ■伊藤達美(いとう・たつみ) 政治評論家。1952年、秋田県生まれ。講談社などの取材記者を経て、独立。永田町取材三十数年。政界、政治家の表裏に精通する。著作に『東條家の言い分』『検証「国対政治」の功罪』など多数。『東條家の言い分』は、その後の靖国神社公式参拝論争に一石を投じた。

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