記事詳細

【日本の元気 山根一眞】緊急時の「モバイル道具セット」刷新! 2021年版「山根一眞ハンドヘルド・デスク」の中身

 東日本大震災10周年直前の3月7日、東京を発ち福島第一原発の構内取材など数カ所の被災現場を回ってきたが、それに先立ってモバイル道具の整理を行った。取材先でのホテル投宿の際には、取材写真や映像、録音、ノート記録などの整理、緊急の原稿書きなどの仕事が不可欠だが、自宅書斎と同じく細々とした「道具」が手元にあると助かる。

 昨年の書斎整理中、17×26×3・5センチの樹脂製のフタ付きの箱が出てきた。米国製の「ArtBin」のケースだ。36年前の1985年、私はこの小型ケースにモバイル用の文房具や記録道具類を詰め込み「ハンドヘルド・デスク」と命名。常に取材時に持ち歩き、大いに役立っていた。そこで、私が最初に書いた情報の仕事術の本で当時ベストセラーとなった『スーパー書斎の仕事術』(86年、ビジネス・アスキー刊、後に文春文庫)で紹介した。

 ちなみに「仕事術」という用語は私の創語だが、この本の出版後、「仕事術」を書名に入れた本が1000冊以上出版されているのには驚くばかりだ(一人として私に断りを伝えてきた著者はいなかったが)。

 久々にその本の「ハンドヘルド・デスク」紹介ページを見たところ、64種もの道具を詰め込んでいたのだ(われながらあきれる)。インターネット開始のおよそ10年前、デジタルカメラも携帯電話もICレコーダーもなかった時代ゆえ、情報道具はアナログ系が主。超小型フィルム式スパイカメラ「ミノックス」(予備用)や超小型マイクロカセット録音機などが中心だった。

 そこで今回、36年前と同じ箱を使い2021年版の「ハンドヘルド・デスク」を作ってみようと思い立った。半分は遊び心で、どこまでコンパクトに最新道具を詰め込めるかやってみたのだが、早速、今回の被災地取材で役立ったのだ。

 まずは使わなくなった小型のiPhoneSEに格安SIMを入れて復活し収納。通信契約なしでもワンセグTVが視聴できる同サイズのスマホも入れた。超薄型モバイル充電池も加えたので、いつでもあらゆる情報がネットで得られ、無料でテレビ視聴も可能になった。

 もっとも、巨大災害発生時には携帯基地局は壊れ通信不能になるため、非常通信用に小型のアマチュア無線機(3バンド対応)も入れた。アマチュア無線は災害時の利用など社会貢献を前提とした制度変更が進み、災害時通信には最高の通信手段なのだ。基地局不要で非常通信ができるその威力はもっと知られていい。私は高校時代にアマチュア無線の免許を得ており、無線局を新規開局をする予定のため、この小型無線機を入れたのである。

 たばこ型ライターは厳寒時にたき火で暖をとり調理する時の着火の備え。短い糸ハンダは電気ケーブルの断線時にライターの火であぶりハンダ付け修理をするためだ(過去に何度か役立ったことがある)。こうして詰め込んだ道具類は約40点。36年前の点数には及ばなかったが、小型文具類などは36年前と変わらないものが多かったのは興味深い。

 巨大災害が続く時代ゆえ、さらに災害対応機能を盛り込みたいと思っている。

 

 ■2021年版「山根一眞ハンドヘルド・デスク」の中身

 おもに巨大災害取材時を想定した便利ツールをまとめたテスト版。携帯(スマホ)回線不通を想定し地方に出る際には数年来、携帯用衛星電話をカバンに入れてきたが、今後は災害対応利用が拡大したアマチュア無線機にシフトする予定で、とりあえず最小サイズの無線機を非常通信用に入れた。今後、傷の手当てや最小限の医薬品類などを加える必要があり、このケースでは小さすぎるかもしれない。なお微小サイズのクモの飼育観察、研究を行っているため生物採集捕獲ツールも含まれている。

 【写真1】

 (1)ドイツ語音声時計&タイマー(ビデオ撮影時やICレコーダー録音時に時刻を音声で録音)

 (2)最小サイズMicro USB Type-Bケーブル(コンパクトに収納)

 (3)最小サイズUSB電源アダプター(iPhone、モバイルバッテリーなどを充電)

 (4)極小サイズUSBチップLED((8)のUSBハブに挿すと4連の高輝度照明になる)

 (5)単3アルカリ電池(アマチュア無線機用)単4アルカリ電池

 (6)USBメモリ(8GB)データの受け渡し用

 (7)超小型デジタル秤(0.01~100g・昆虫体重測定、取材時極小部品質量確認などに使用)

 (8)USBハブ4ポート(USBチップLEDを挿入しモバイルバッテリー接続で高輝度非常用照明に)

 (9)超極薄厚さ6mmモバイルバッテリー(5000mA)

 (10)ボタンと針と糸(ホテルアメニティからセレクト・写真なし)

 (11)006P(9V電池)に直接挿すLED照明(ティッシュペーパーで覆うと適度な照明になる)

 (12)マルチ工具(ハサミがありがたい、缶切り、栓抜きもあり折り畳むと超コンパクトに)

 (13)太い輪ゴム(レジ袋に水を満たしこの輪ゴムで縛れば持ち運べる非常用飲料水になる)

 (14)クモなど極小サイズ昆虫撮影時に写し込むスケール

 (15)USB Type-BケーブルをiPhone充電に使える超ミニサイズ変換アダプター

 (16)ダイヤモンド鑑定用超精密折り畳み式ルーペ(×10・×30:モバイル顕微鏡として使用)

 (17)精密ピンセット

 (18)ソフト接着剤ひっつき虫(小物撮影時に仮止め固定の粘土、繰り返し使用可能)

 (19)たばこ型ライター(東日本大震災のような厳寒災害時の焚火暖房や煮炊き着火に必須)

 (20)超小型レーザーポインター(工場取材時などに離れた設備を照射し説明を受ける)

 (21)糸ハンダ(断線ケーブル等に巻き付けライターで炙ればハンダ付け可能、経験済み)

 (22)超小型瞬間接着剤

 (23)6種のドライバーセット兼懐中電灯(雑誌DIME付録)

 (24)70%エチルアルコール(消毒用兼極小昆虫標本保存用)

 (25)熱帯魚用ネット(広げると袋状になる、クモなど極小昆虫採集用)

 (26)144/430/1250MHz 3バンドアマチュア無線機(災害時非常通信用)

 (27)イタリア製角軸ボールペン(デザインと色がよいので購入)

 (28)iPhone SE(旧モデルで利用しなくなった機種に格安SIMを入れドコモ回線対応とした)

 (29)スマホXPERIA・SO-02C(SIMカードなしでもFMラジオと地デジTVを視聴できる)

 (30)1mの麻紐(10cmごとに印をつけてあり結束用と簡易メージャーに)

 (31)明治45年の壱圓銀貨(持ち歩く意味はないが楽しい)

 (32)長い竹串(工具の一助)

 (33)爪楊枝(工具の一助)

 (34)アルコール温度計(発熱時にはコロナ対策体温計としても利用、)

 (35)明治ミルクチョコレート5片(災害時の最小カロリー補給、35分間の卓球運動消費量に相当)

 (36)負傷時の緊急鎮痛剤

 (37)極小サイズ歯磨きペースト(簡単な樹脂や金属磨きにもなる)

 (38)歯ブラシ(柄を使用可能極限サイズにカット、埃や標本ブラッシングにも利用)

 (39)歯間ブラシ

 (40)幅を細くカットした樹脂スプーン(コーヒー等飲食用、スプーンのないホテルで使用)

 【写真2】

 蓋表上(写真右):8.5インチLCDデジタルメモパッド(雑誌「DIME」2021年1月号付録)

 蓋裏(写真左):アマチュア無線バンド表(非常通信周波数リスト)、モールスコード一覧、NATO仕様および日本語のフォネティックコード(C=チャーリー、ス=スズメのス)、緊急電話リストなどをまとめた紙を貼り付けた。モールスコードはヘリコプターなどにレーザーポインターの点滅など光でも通信できる。

 蓋表LCDデジタルメモパッドの裏:小型紙製の星座早見盤(写真なし)

 ■山根一眞(やまね・かずま) ノンフィクション作家、福井県年縞博物館特別館長。愛地球博愛知県総合プロデューサーなど多くの博覧祭も手がけてきた。近刊は『理化学研究所 100年目の巨大研究機関』『スーパー望遠鏡「アルマ」の創造者たち』。「山根一眞の科学者を訪ねて三千里」(講談社)を連載中。理化学研究所名誉相談役、JAXA客員、福井県交流文化顧問、獨協大学非常勤講師、日本文藝家協会会員。

関連ニュース