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【日本の元気 山根一眞】湖底堆積層「年縞」展示 福井の「人の力」に感謝 (1/2ページ)

 緊急事態宣言が解除されたため、年縞(ねんこう)博物館(福井県若狭町)に「出勤」してきた。博物館から見る山々には山桜が咲き始めていた。博物館は三方五湖のひとつ、三方湖へとそそぐハス川の川岸にあるが、その水辺風景は何時間でも立っていたくなるすがすがしさだ。

 この三方湖の隣、三方五湖では最大の水月(すいげつ)湖(周囲10キロ)の湖底下の堆積層が美しい縞々をなしていることが発見されたのは1980年代後半のことだった。

 縞の1つは1年分の堆積層で約0・7ミリ。これは後に「年縞」と呼ばれるようになるが、過去の自然史を知る重要なサンプルであることは間違いなかった。そこで数回にわたるボーリングが行われたが、岩盤までの年縞を途切れなく採取するのはきわめて困難で、やっと成功したのは2006年になってからだった。

 当時、英国の大学講師だった37歳の中川毅さん(現・立命館大学教授、年縞博物館研究マネージャー)が日欧の研究者チームを率いたプロジェクトだったが、驚くべき発見があった。水月湖の湖底には45メートル、7万年分の年縞が1年の途切れもなく残されていたのだ。

 この年縞は、縞々に残る葉の化石が含む放射性炭素の量によって、世界のあらゆる歴史研究に欠かせない出土品の年代決定の「世界標準のモノサシ」に採用される栄誉を手にした(13年)。さらに、縞々に含まれる花粉分析によって過去7万年の緻密な気候変動を再現してくれるタイムマシンとしての発見も続いている。こうして水月湖は、「奇跡の湖」と呼ばれるようになった。

 年縞博物館は、この水月湖の45メートルの年縞の「現物」を切れ目なく見ていただき、その科学的成果をキマジメに伝えることを主眼として18年9月に開館した。

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