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【日本の元気 山根一眞】キーボードはカウボーイの鞍と同じ 「指先の不快感」を解消した「HHKB」 (1/2ページ)

 キーボードをたたいて日本語原稿を書きながら、ふと思った。タイプライターのキー配列「QWERTY(クワーティ)」がアメリカで誕生し来年で150年だが、日本人の私が英文用キーボードで日本語を当たり前のように入力(タイプ)しているのは何と不思議なことか、と。

 南米上空を飛行中の機内で、私がノートPCで原稿をタイプしていたところ、その画面をのぞき込んだ客室乗務員の女性たちに騒がれちゃったことがある。英文キーボードをタイプしているのに、画面に象形文字のような不可解な文字(つまり漢字仮名交じり文)が表示されるのが不思議だと言うのだ。笑ってはいけない。私たち自身、QWERTYで日本語入力する方式の「発祥は?」と聞かれてもまず答えられないだろうから。

 QWERTYキーボードによる「ローマ字入力による日本語変換」を最初に搭載したのは、1980年発売のキヤノンの第1号ワープロ専用機「キヤノワード55」だ。私は当時、「ローマ字入力」という大胆な発想に取り組んだ同社のエンジニアたちを取材し続け、キヤノワードのファンになった。

 だが、「55」の価格は260万円。とても手が出せなかったが、安くなった「キヤノワード45」が83年に出たので飛びついた。それでも価格は99万8000円もした。私は、キーボードで原稿をタイプする執筆大革命時代の大先陣を切るのだと、わけのわからないことを言って妻に泣いてもらったのでした(当時、キーボードで原稿の執筆を始めた職業ライターは数人に過ぎなかったはず)。

 このワープロによる執筆は実に軽快だった。それはローマ字入力とともに、間違いなくキーボードが秀逸だったからだ。90年代に入りアップルのパソコン「Mac」で原稿を書くようになったが、かつてのキヤノワードの高級キーボードに比肩するものはなく、「指先の不快感」は解消しなかった。

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