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【高橋洋一 日本の解き方】日本が対外純資産「世界一」の意味 経常黒字と成長率に相関なし、成熟債権国から取り崩し国へ (1/2ページ)

 財務省が発表した昨年末の対外資産負債残高で、日本の対外純資産は356兆9700億円となり30年連続で世界一だったと報じられた。

 世界一と聞くと何か誇らしげだが、経済学的な意味はそれほどない。

 国際収支を複式記帳でみれば、経常収支黒字(赤字)は必ず外貨準備増減を含む広義の資本収支赤字(黒字)に等しくなる。資本収支赤字はカネが出ていくことであり、資本供給つまり対外資産を獲得するともいえる。これで、経常収支黒字は対外資産の増加の源であることがわかる。原則として、累積経常収支が対外純資産残高になる(ただし資産のキャピタルゲインを除く)。

 対外純資産残高が大きいほうがいいという価値判断は、経常収支黒字が望ましいという価値判断に通じている。しかし、国際収支を損得感情で理解するのは正しくない。今でも経常収支は黒字がいいという通念があり、歴史的にも重商主義時代にはそう信じられていたが、今となっては経済学的には誤りであることが知られている。

 カナダのように経常収支が100年以上にわたり、ほとんどの年において赤字でも、発展してきた国もある。アイルランド、オーストラリア、デンマークなどの経常収支も第二次世界大戦以降大体赤字であるが、それらの国が「損」をしてきたわけでもない。

 世界各国の平均経常収支対国内総生産(GDP)比と平均実質成長率について、長期的にみると相関はほぼなく、経常収支対GDP比と実質経済成長率にはなんら関係がないことがわかる。こうした意味で、経常収支黒字が望ましいわけではない。

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