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【軍事のツボ】英空母クイーン・エリザベスと「コスト強要戦略」 (4/5ページ)

 (2)米国は対応策として「海洋圧力戦略」というA2/ADを逆に中国に向ける長期戦略をとりつつある。第1列島線上に長距離対艦ミサイル配備や基地の耐たん力向上などによるA2/AD能力を構築する。さらに長距離精密誘導兵器により中国内陸部への戦力投射を行うことで、重要目標の強靭化への投資など軍事的コストを増大させるのが狙いだ。自衛隊が進める南西諸島への地対艦ミサイル配備などもこれに連動しているといえる。

 (3)加えて、多国間の連携が必要。コストやリスクを分散させられ、力は圧倒的になる。同盟国やパートナー国との間で、軍事演習や訓練の強化のほか、武器移転・能力構築、監視体制の構築・強化が具体策だ。日米豪印の協力関係「クワッド」、英国やフランスなどの艦艇派遣や共同訓練はこれに合致したものだ。

 (4)ただし中国が高いコストを払っても支配の意図を持つのであれば、コスト強要戦略は有効性が大きく低下するか無力になる可能性がある。中国は南シナ海などを「核心的利益」としており、支配のためにコストを無視するとの見方は可能だ。

 しかし、支配の目的は共産党の独裁体制の維持にある。だから支配を確立してもコスト無視により経済が傾けば、国内での不安・不満の増大から共産党支配体制の危機が生じる可能性が高まる。