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熱海の大規模土石流は“人災”か 盛り土と太陽光…高橋教授「斜面の保水力失わせるリスクがある」 関東・関西に多い“土石流レッドゾーン”

 静岡県熱海市伊豆山で少なくとも約130棟が流された大規模土石流で、県警や消防、自衛隊などは5日、安否が確認できていない113人の所在確認を急いだ。崩落した斜面には大量の盛り土があり、近くには大規模太陽光発電所(メガソーラー)もあるなど大規模造成が被害を拡大させたとの声も出ている。首都圏や関西圏にも土石流の特別警戒区域(レッドゾーン)や警戒区域(イエローゾーン)は多いほか、専門家は都市部や住宅地にも土石流のリスクがあると指摘する。

 発生から3日目となり、県や市によると、これまで2人が死亡、2人が負傷した。市は4日時点で所在が分からなかった147人のうち34人の無事を確認。住民基本台帳に基づき、残り113人の確認を急いだ。現場一帯で泥に埋まった家屋の捜索や、がれきの除去など、復旧に向けた作業が続いた。

 土石流は3日午前10時半ごろ発生した。ツイッターに投稿された動画では、山の上から黒い土石流が「ドドド」と轟音(ごうおん)を立てながら、住宅が密集する急な坂道を流れ落ちていた。

 発生源の斜面では幅100メートル、深さ最大10メートル以上の大規模な崩落が起きていた。一帯では宅地造成により約5・4万立方メートルの盛り土があった。堆積は10年以上前から行われていたとみられる。県ではこれを含めた10万立方メートルが崩落して被害を甚大化させたとみている。

 崩落地の東側は山中が切り開かれ、メガソーラーが設置されている。自民党の細野豪志衆院議員は4日、現地を調査した人から送られたという画像をツイッターに投稿、崩落地の縁からメガソーラーまでの距離は20~30メートルとしたうえで、「メガソーラーの尾根の崩落はなさそうだが、設置部は保水力が無くなるので動画を見る限り無関係とは言いきれないのではないか。やはり調査が必要」との見解を示した。

 災害史や地理に詳しい立命館大環太平洋文明研究センターの高橋学特任教授は「集中的な雨で火山灰を含む地層から水が流れ出たことが最大の原因だが、盛り土によって谷だった部分に水が入り込んだことも土石流の最後の決め手になったと考えられる。宅地開発やソーラーパネル設置などで急斜面の樹木を切ることも保水性を失わせるリスクがある」と指摘する。

 熱海市は全域が市街化区域と市街化調整区域の分類がなされていない「非線引き」の都市計画区域で、3000平方メートル未満の開発行為は許可も不要のため、開発が進みやすい環境といえる。

 現場周辺は土砂災害警戒区域(土石流)に指定されていたが、決して特殊なケースではない。

 首都圏では、神奈川県小田原市や横須賀市、相模原市、南足柄市、湯河原町、箱根町などに、土石流の危険度がより高い特別警戒区域が複数ある。東京都では高尾山周辺など八王子市、稲城市など、埼玉県は飯能市や入間市など、千葉県では鋸南町などに特別警戒区域が存在する。

 関西では大阪府北部の箕面市や池田市、東部の大東市や東大阪市、八尾市、南部の富田林市や河内長野市、岸和田市、河南町など。京都府では京都市山科区、左京区、北区、右京区、西京区などに特別警戒区域がある。

 兵庫県では神戸市、宝塚市、西宮市に特別警戒区域があるほか、芦屋市北部は警戒区域に指定されている。「兵庫県の西宮や芦屋から神戸市須磨区にかけて延びる六甲山地から海側は、1938年の水害で海まで土石流が達したとされており、現在の新神戸駅や繁華街の三宮周辺まで被害が及ぶ恐れもある」と高橋氏。

 ■高地から谷底へ「都市型土石流」リスクも

 指定地域は山沿いが多いが、高橋氏は、都市部でも大雨で高地から谷底に向かう「都市型土石流」が発生するリスクがあるとみる。その場合、「横浜駅や横浜スタジアムなどのある官庁や繁華街は1~2階までは機能しなくなる可能性がある。千葉も千葉市から富津市に至る台地に住宅地が広がる地域、東京では目黒川や神田川の流域なども注意が必要だ」。

 自治体のハザードマップや国土地理院の「重なるハザードマップ」などで警戒区域の確認が可能だ。高橋氏は「付近に500メートル級の山があり、西日本では山地の南側、東日本では山地の東側で2階建て程度の一般住宅に住む場合、毎時40ミリの雨量で注意が必要で、降り始めから200ミリに達する前に避難した方がいい」と強調した。

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