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【東日本大震災から10年半 忘れない、立ち止まらない】高田松原にハマエンドウが咲いていた! 震災から10年かけて取り戻してきたもの (2/2ページ)

 長かった。苦しかった。二度と取り戻せないかと思った-砂浜も、松林も、ここに憩う人々の姿も-。けれど、確かに一歩ずつ、着実に再生へと進んできたのだ。

 青紫色のかれんな花の輪郭がにじんで見えたのは、強い潮風のせいばかりではない。

 この夏は、11年ぶりに海開きも行われた。

 明らかに“震災後生まれ”の子らが砂浜を駆け、水しぶきをあげてはしゃぐ様子がまぶしかった。

 以前を知らないあの子たちにとっては、今のここが「高田松原」なんだよな…そう気づいてハッとした。

 昔とすっかり同じである必要はない。彼らはここで、新しい松原との思い出をつくっていくのだ。かつての自分たちのように。

 白砂青松の上に、再び時は流れ始めた。姿を変えても高田松原が愛される場所であることに変わりはない。ハマエンドウの花のように、そこで遊ぶ人たちの笑顔は昔と同じ。この笑顔を取り戻せたことが、何よりの復興の証なのだ。

 海開き後の浜から帰ると、ジーンズのポケットから砂がこぼれ落ちた。

 …そうだ、こういう“お土産”を持たせてくれるのが高田松原だった-懐かしさに、思わず目を細めた。

 ■鈴木英里(すずき・えり) 1979年、岩手県生まれ。立教大卒。東京の出版社勤務ののち、2007年、大船渡市・陸前高田市・住田町を販売エリアとする地域紙「東海新報」社に入社。震災時、記者として、被害の甚大だった陸前高田市を担当。現在は、同社社長。

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