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【安全保障最前線】アフガン紛争、イラク戦争に不適用だった米の軍投入6原則「ワインバーガー・ドクトリン」 対テロ戦争が20年間続いた原因に (2/2ページ)

 しかし、問題は(3)と(4)である。ヘンリー・キッシンジャー元国務長官をはじめ、多くの識者は「達成可能な目標を明確にすべきだったが、政治的目標は抽象的過ぎて捉え所がなく、軍事的目標は絶対的過ぎて達成不可能だった」と主張している。

 そもそも、歴代米政権が掲げた「アフガンを近代的な民主主義国家にする」という目標は達成不可能な目標だったのだ。アフガンは、歴史的に各部族が部隊を保有する封建的な国であり、各部族は中央集権的な国家統治に激しく抵抗してきた。

 彼らが望んだのは「イスラム法に基づく統治」であり、民主主義による統治ではなかった。米国の民主主義国家建設の押し付けは、実行不可能だった。

 米軍はいつ撤退すべきだったか。

 ワインバーガー・ドクトリンにのっとると、目標がイスラム原理主義勢力「タリバン」や、国際テロ組織「アルカーイダ」の排除であれば、2002年までに排除は終了しており、その時点で米軍を撤退させるべきだった。

 目標が、米中枢同時多発テロ事件の首謀者、ウサマ・ビンラーディンの排除であれば、米海軍特殊部隊「シールズ」が11年5月、パキスタンで殺害した時点で米軍を撤退させるべきだったのだ。

 いずれにしろ、ワインバーガー・ドクトリンが、アフガン紛争やイラク戦争に厳格に適用されなかったことが、米国の対テロ戦争が20年間も継続した原因の1つだと思う。

 ■渡部悦和(わたなべ よしかず) 元陸上自衛隊東部方面総監、元富士通システム統合研究所安全保障研究所長、元ハーバード大学アジアセンター・シニアフェロー。1955年、愛媛県生まれ。78年東京大学卒業後、陸上自衛隊に入隊。その後、外務省安全保障課出向、ドイツ連邦軍指揮幕僚大学留学、第28普通科連隊長(函館)、防衛研究所副所長、陸上幕僚監部装備部長、第2師団長、陸上幕僚副長を経て2011年に東部方面総監。13年退職。著書に『自衛隊は中国人民解放軍に敗北する!?』(扶桑社新書)、『中国人民解放軍の全貌』(扶桑社新書)など。

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