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【高橋洋一 日本の解き方】中原伸之氏が遺した大きな功績 マクロ経済政策の知見でインフレ目標を早くから提唱、アベノミクス導入で失業者救う (1/2ページ)

 元東亜燃料工業(現ENEOS)社長で、日銀審議委員を務めた中原伸之氏が亡くなったという悲しい知らせがあった。その後、全国紙でも亡くなったことが報じられた。

 まず指摘したいのは、中原氏が財界人でありながら、マクロ経済政策についての知見を持っていたことの貴重さだ。財界人は経済が分かると思われがちだが、実際に分かっているのは半径1メートルくらいの自分の企業や業界周りの身近な話ということが多い。経済学でいえば、ミクロ経済である。「経済」といっても「経営」の話が分かっているだけともいえる。

 マクロ経済は、経済学を学ぶ学生にとっても抽象的で理解しにくいものだが、中原氏は理解していた。筆者は中原氏ほどマクロ経済政策に精通している財界人を知らない。

 筆者は、1998年から2001年まで米プリンストン大学に客員研究員として留学していた。その当時のプリンストン大は、後に米連邦準備制度理事会(FRB)議長となるベン・バーナンキ氏や、ノーベル経済学賞を受賞するポール・クルーグマン氏、スウェーデン中央銀行副総裁となるラース・スベンソン氏、元FRB副議長のアラン・ブラインダー氏らという世界一流の金融政策の大家が多く在籍しており、毎週のセミナーでは、なぜ日本がデフレなのかなど興味深い話題について活発に議論していた。

 筆者もそのセミナーに参加したが、ある日、当時の日銀政策決定会合の議事録を英訳し議論した。そのとき、参加者の一人が、「日銀委員の意見はみんなジャンク(がらくた)だ。ただし、中原氏のものを除く」と発言した。中原氏だけがインフレ目標の話をしていたからだ。

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