欧州一“美しい町”を訪ねる!絵になる風景の数々

2012.05.25


ボヘミアの町「チェスキー・クルムロフ」【拡大】

 5月から6月にかけてのヨーロッパは、花が咲き始め、新緑とのコントラストが非常に美しく、とりわけ地方の田舎町は風情があってベストシーズンを迎えます。そこで今回はヨーロッパの地方都市の中でも最も美しい町の一つとされるボヘミアのチェスキー・クルムロフをご紹介します。

 チェコの首都であり、「百塔の町」と称されるプラハから南へ約250キロ、スメタナの交響詩で名高いヴルタヴァ川がS字形に曲流し、まるで2つの島のようになっている高台に城が築かれ、この町の起源となりました。

 そのチェスキー・クルムロフ城のシンボルとなっている塔は、かき落とし技法であるスグラフィット(立体感を与えるための一種のだまし絵)で彩色されており、町のどこから見ても目立つ存在です。

 そこで、多くの観光客はこの城と市庁舎のあるスヴォルノスティ広場を中心とした旧市街を散策するだけで立ち去るケースが多いのが残念です。なぜならこのチェスキー・クルムロフに限りませんが、文化遺産の町は滞在してこそ本当の良さが理解でき、特にこの絵のような中世風の町は、夕暮れ時から夜にかけて昼の喧騒から開放された静寂のひとときにこそ最高に輝くのです。

 とりわけお薦めはかつてイエズス会の学校であったルネサンス風のHotel Ruze(チェコ語で「薔薇」の意)での滞在です。このホテルの建物は、16世紀にロジェンベルク家の城主によって建てられ、正面にはイエズス会の紋章があり、当時のイエズス会教育資料も展示されています。

 その資料によると「目に見えるものや芸術を通して人間は神と出会える」とし、美術や音楽を重視していたことがわかります。また、この地域特有の文化も保護していたようで、ハプスブルク帝国の圧力があったにもかかわらずチェコの伝統芸術が建物の壁絵や人形劇などで残っているのはこのイエズス会教育の影響が大きいと思われます。

 ホテルは3階建てで部屋から眺める景色は時間と共に変化し、ライトアップされた城や朝日に輝くオレンジ色の街並みは筆舌に尽くしがたい美しさです。

 オーストリアの画家エゴン・シーレは母の故郷であるこの町を好んで訪れ、風景画を何枚も描いていますが、彼ならずともスケッチしたくなるような風景や壁絵がこの町には多く存在します。

 ■黒田尚嗣(くろだ・なおつぐ) 慶應義塾大学経済学部卒。現在、クラブツーリズム(株)テーマ旅行部顧問として旅の文化カレッジ「世界遺産講座」を担当し、旅について熱く語る。

 

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